半分購入ファンドを募集する理由 ー立ち直りを応援ー
皆さん、こんにちは。
現在、セキュリテで募集している日本酒ファンドの中に、「半分購入」マークがついているものがあります。
この「半分」とは、いったいどういうことなのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
今日は、このセキュリテならではの「半分購入」ファンドについて、仕組みや特長、それが生まれた背景についてご紹介したいと思います。
1.半分購入ファンドの仕組み
セキュリテでの「半分購入」とは、「半分出資・半分購入」ファンドのことで、1口金額のうち、50%が出資で、残りの50%が商品の購入に充てられる仕組みです。
例えば1口2万円(取扱手数料を除く)のファンドの場合、半額の1万円ずつが、それぞれ出資金と購入代金に充てられます。
ファンド全体では、例えば総額1000万円のファンドの場合、500万円が出資、500万円が購入に充てられます。これを事業者の目線で見ると、出資分の500万円は資金使途通りに使える資金として、購入分の500万円は商品の売上として入ってきます。会計上は、出資分は預り金として貸借対照表上の負債(注1)に、購入分は損益計算書上に売上として計上されます。
注1 当社のファンドで採用している「匿名組合」スキームでは、出資金は「匿名組合預り金」として、借入と同様、負債の部に計上されます。
2.半分購入ファンドの特長
特殊な設計の「半分購入」ファンドですが、その特長をよりご理解いただくために、他の仕組みと比較してみたいと思います。
「購入型クラウドファンディング」と比較
まず、「購入型クラウドファンディング」と比べてみます。購入型は、いわゆるクラウドファンディングの典型的なもので、プロジェクトへの支援の対価として、支援者は商品やサービスを受けとります。これは、ECサイトで商品やサービスを売買することと変わらないため、事業者が受け取る資金は売上となり、事業所得として課税の対象になります。
リターンとして送付する商品には当然原価がかかっています。その上、さらにプロジェクトのプロモーションのために、割引率の高いお得なリターンを設定したりすればするほど、支援金額が大きくなっても手元に残るお金はほとんど無い、ということも起こります。それでも、売上自体は上がりますので、商品の販売やPRが目的であれば問題はありませんが、もしクラウドファンディングによって資金調達をしたいということですと、困ったことになります。
その点、半分出資・半分購入の仕組みですと、事業者は売上も上げながら、出資分については、その全額を事業資金として使用できるのが強みです。
セキュリテの「通常のファンド」と比較
次に、セキュリテで募集している「通常のファンド」と比べてみます。通常のファンドは、1口金額(取扱手数料を除く)の100%が出資金となり、その全額を予め自由に設定した設備投資や仕入資金、運転資金等の使途に使うことができます。上述の通り、売上ではなく、負債としての計上になるため、金額を受領した時点では課税の対象にはなりません。
しかし、受領時点でのメリットは大きいものの、会計期間を通じて売上の一定割合を分配していくため、将来的な分配金支払いの負担が発生します。同じ負債でも、銀行からの借入と異なり、セキュリテのファンドでは、連帯保証無し、担保提供無し、元本保証無し、売上連動のため売上が少なければ分配金額も少なくなるという、非常に事業者に寄り添った設計になってはいますが、それでも金融商品である以上、出資者には会計期間を通じて出資の元本を超える金額を分配することを目標にしています。
半分出資・半分購入の仕組みですと、事業者は投資に使える事業資金を確保しながら、購入分については、マーケティングの負担減や在庫の軽減等の利点も享受した上で、将来の分配金負担を半減できるというメリットがあります。
購入型クラウドファンディング | 半分購入ファンド | 通常のファンド | |
購入割合 | 100% | 50% | 0% |
出資割合 | 0% | 50% | 100% |
事業者にとっての特徴 (相違点) |
・商品の販売ができる ・売上として計上 ・事業所得として課税の対象 ・手元に残るお金が少ない |
購入型クラウドファンディングと通常のファンド、それぞれの特徴を合わせ持つ | ・事業資金として使える ・負債として計上 ・受領時点では課税されない ・分配金の支払いが必要 |
一方で、出資者の皆様にとっては、1口金額の半分しか出資金にならず、経済的リターンが半減するわけですから、純粋に「投資」としてだけ考えると、魅力的とは言えないでしょう。そもそも、セキュリテに会員登録されている方は、「投資」することを目的にしている方が多いので、実際、通常のファンドの方が人気が高い傾向にあり、半分購入ファンドは資金調達速度が鈍くなる傾向にあります。そのため、当社としても簡単には、半分購入ファンドを募集しません。十分に商品に魅力があり、さらに、半分購入にする理由、せざるを得ない理由がある時に限り、半分購入ファンドをつくっています。
では、今なぜこのタイミングで半分購入の日本酒ファンドが3本もあるのか。それを次にご説明します。
3.酒造をめぐる状況
今もお酒の界隈に大きな爪痕を残しているものがあります。
それは、新型コロナウイルス感染症です。
現在はその影響は落ち着いたものの、4〜5年に及ぶ期間のダメージは非常に大きく、今はまだ「立ち直り期」であると言えます。
日本酒蔵の多くは、酒販店やお酒の卸業者さんへお酒を卸しており、直販の比率の方が低い傾向にあります。コロナ禍で飲食店が軒並みやっていなかった時に、取引先によっては出荷が「0」になってしまったことも少なくありません。そして、そのような非常時に製造数を絞り、在庫過多にならないように調整していた蔵も多かったそうです。
しかし、それが一時的な対応だったとしても、製造数を減らすということは、その分お酒1本あたりの「原価」が上昇するため、大幅な値上げをしない限り利益幅は小さくなってしまいます。値上げを行わなかった(もしくは少額の値上げに留めた)場合、損益計算書の見栄えも悪くなるため、金融機関からの借入にも影響が出てしまう可能性があります。
しかも、酒米生産者さんに翌年以降も酒米を作ってもらうために、彼らの生活を支えるために、製造数は減らしても、酒米の購入自体は継続させた蔵もあったと聞きます。
こうした事態が数年も続けば、当然、資金繰りは厳しくなり、経営も苦しくなります。
今後、製造数を戻し、または増産して販売を強化しないといけませんが、コロナ禍に巣篭もりを経験した消費者の意識も変わったため、これまでと「同じ」状態に戻るのはおそらく不可能だとも言われています。ということは、新しい販路や売り方、認知のされ方など、変化した市場への対応が必要になります。
また、セキュリテでファンドの募集を行う酒蔵は、酒質へのこだわりから、多くの工程を手作業で行なっている蔵も多く、故に製造量の上限がそもそも大きくないという場合もあります。
こうした酒造をめぐる状況を踏まえ、今後も美味しい日本酒を造り続けていただくために、今は、通常時に比べ、より一層の「応援」を募る仕組みが必要だと当社では考えました。
それが今、私たちが日本酒まつりを開催している理由の1つであり、日本酒のファンドの中に半分購入のファンドが複数ある理由です。
4.最後に
2009年に「セキュリテ」を立ち上げた時、そのキャッチコピーは「大切なものを『守る』投資」でした。
一般的に「ファンド」と言うと、事業拡大を前提に成長路線を進む事業者に対して、大口の投資家が、キャピタルゲインを狙って行うもの、というイメージかと思います。
しかし、セキュリテの哲学はその真逆で、このコピーはそれを体現したものでした。
セキュリテを立ち上げることになったきっかけが、2007年に第1号を募集した日本酒ファンドであったことは、こちらの日本酒まつりの記事にも少し書きましたが、神亀酒造さんを始めとする全量純米蔵を目指す会の皆さんとの出会いが当社を変えたと言っても過言ではありません。
その時から、私たちは、必ずしも事業拡大を目指していなくても、強いこだわりを持ち、上質のものを造り続けていくこと、絶やさず守り続けていくことにも価値があることを知りました。そして、そこに共感する方が大勢いて、大口投資家が一人で1000万円出すというやり方ではなくて、1000人のお酒の愛好家が1万円ずつ出すというやり方で、その事業を応援できるのだということをこれまで実践してきました。
その中でも、「半分購入」の仕組みは、被災事業者を支援するために生まれた「半分寄付」の仕組みと並ぶ、事業を守り、応援する、セキュリテの共感投資の進化系の一つです。
ぜひお酒好きな方にご参加頂き、出資だけでなく、半分購入で売り上げにも貢献し、美味しいお酒を楽しみながら、事業を応援していただければと思います。
セキュリテの共感投資によって、伝統的酒造りの文化を守り、未来を共に創ってまいりましょう。
【現在募集中の半分購入ファンド】
◆名倉山酒造「きれいなあまさ」のお酒ファンド
「きれいなあまさ」を追求する会津の名蔵『名倉山酒造』の第2弾ファンド
◆下村酒造店140周年「奥播磨 伝授」ファンド
創業から140周年目の酒造り。ありったけの技術を投じた限定酒を製造します
◆岡山の地酒 白菊酒造ファンド2024
白菊酒造の第10弾ファンドが募集開始。岡山の名酒をお届けします。
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