セキュリテ解説 2025年11月13日 19:30

【解説記事】事業投資型クラウドファンディングとは?共感とリターンを両立する「応援投資」

/data/blog/archive/original/61555.png

インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集めるクラウドファンディング(CF)の中でも、「事業投資型」のクラウドファンディングは、社会的な意義と経済的なリターンの両方を求める投資家にとって新しい選択肢を提供しています。本記事では、事業投資型クラウドファンディングの仕組み、法的根拠、メリット・リスクについて、初めての方にも分かりやすく解説します。
 

1. 事業投資型クラウドファンディングとは?基本の仕組みを理解する

1-1. 「事業投資型」とは、売上連動で分配される投資型クラウドファンディングの一種
クラウドファンディングは、資金提供者が得られるリターンに応じて、主に寄付型購入型投資型の3種類に分類されます。
このうち「事業投資型クラウドファンディング」は、投資型クラウドファンディングの一種です。投資家が出資した資金は、事業者の運転資金や設備資金などに活用され、その事業で得られた事業収益(売上)に応じて、あらかじめ定められた計算式に従って金銭が分配されます。

1-2. 寄付型・購入型との最大の違いは“金銭的リターンがある”こと
事業投資型クラウドファンディングの最大の特徴は、金銭的なリターンを得られる点にあります。
寄付型:リターンはなく(金銭的な対価は求めない)、活動報告や感謝の品などが一般的です。
購入型:リターンはモノやサービスなど、金銭以外の対価です。
投資型(事業投資型):リターンは、事業収益に応じた金銭です。
 
1-3. 応援の気持ちと、経済的リターンのバランスを取る新しい仕組み
事業投資型クラウドファンディングは、単なる資産運用としてだけでなく、「誰かを助けたい、応援したい」という共感の気持ちや、その事業が持つ社会的なインパクトを重視する投資行動です。
投資家は、事業者のプロフィールやビジョンに共感し、その「思い」に応える形で資金を供給します。この仕組みは、資産形成と社会貢献の中間に位置する、新しい資金の流れ方であると言えます。
 

2. 匿名組合契約とは?出資者が知っておくべき法的根拠

2-1. 事業投資型で使われる「匿名組合契約」の仕組み
事業投資型クラウドファンディングでは、多くの場合、匿名組合契約という法的な契約形式が用いられます。
この契約は、「資金調達者である事業者(営業者)」と、「資金提供者である投資家(匿名組合員)」との間で、仲介事業者(プラットフォーム)を介して締結されます。
 
2-2. 投資家は「経営には関与しないが、売上に応じた分配を受ける」
匿名組合契約において、投資家(匿名組合員)は出資金を提供しますが、その事業を実際に運営するのは事業者(営業者)です。
投資家は、事業の経営には直接的に関与しない立場ですが、その代わり、事業活動から生じた収益に応じた分配金を受け取る権利を持ちます。また、分配金以外にも、事業者の自社製品やイベント招待などの特典が付与されるケースがほとんどです。
 
2-3. 金商法上の取り扱い
事業投資型クラウドファンディングは、金融商品取引法(金商法)の規制対象となります。
そのため、仲介事業者(プラットフォーム運営者)は、金融商品取引業者として登録を受ける必要があります。匿名組合によるファンドの募集は、みなし有価証券の取り扱いに該当し、ミュージックセキュリティーズ株式会社(当社)は、第二種金融商品取引業者として登録されています。
仲介事業者の役割には、出資者の資金保全が含まれます。皆様から預かった出資金や事業者からの分配金は、信託口座で仲介事業者(当社)の財産とは分別して管理(分別管理)します。また、出資金が資金使途通りに使われているかを証憑を元に確認し、出資者に報告する役割も担います。
 

3. 出資から分配までの流れを理解する

3-1. 基本的な流れ
事業投資型クラウドファンディングにおける基本的な資金の流れは以下の通りです。
1. 掲載申込・審査: 資金調達をしたい事業者(営業者)が仲介事業者に掲載を申し込み、仲介事業者は事業内容やリターンの確実性、リスクなどを審査します。
2. 掲載・募集: 審査を通過したプロジェクトがウェブサイトに掲載されます。
3. 出資申込・実行: ウェブサイトを見て共感した個人や法人(投資家/匿名組合員)が、出資(資金提供)を申し込みます。事業者(営業者)は集まった資金をプロジェクトに活用します。
4. 事業実行・報告: 事業者(営業者)は事業を実行し、進捗状況などを投資家に報告します。
5. 分配: プロジェクト実行後、事業の実績に応じて金銭(分配金)を分配・償還します。仲介事業者が売上の任意監査を行い、分配金の計算や手続きを代行します。
 
3-2. 分配金の仕組み:売上連動、目標達成率による変動も
分配金は、事業の収益に応じた額が、契約時に定められた計算式に基づいて支払われます。
事業投資型クラウドファンディングのファンドには、予め分配計算式が設定されており、匿名組合員にとっての損益分岐点(リクープ)や目標償還率が設定されますが、これは将来の分配金額を保証するものではありません。売上が伸びなければ、当然分配金も少なくなります
 
3-3. 分配はいつ・どのように行われるのか?期間・回数の目安
分配は、契約で定められた一定期間にわたって行われます。
ファンドの運営期間(出資から償還までの期間)は、プロジェクトによってさまざまです。長期のプロジェクト(被災地応援や最近募集した「映画 えんとつ町のプペル 約束の時計台ファンド」など)では、運用期間が10年間以上に設定されている事例もあります。分配金の支払いの頻度についても、年に1度、毎年分配するのが基本ですが、プロジェクトごとに異なり、例えば「期末一括分配」のファンドも存在します。
分配金は、事業者から仲介事業者(当社)を経由して、出資者の銀行口座に送金されます。
 

4. 出資者としてのメリットとリスク

4-1. メリット:共感できる事業を応援しながらリターンが得られる
事業投資型クラウドファンディングのメリットは多岐にわたります。
共感の実現とリターンの両立: 単に社会貢献を目的とするだけでなく、共感した事業を応援しながら、事業収益に応じた金銭的なリターンを得ることができます。
「顔の見える」投資体験: 投資家は、仲介事業者が開示する事業者のプロフィールや事業内容を通じて、顔が見えやすい形で資金提供を行うことができます。また、出資金が何に使われたかも知ることができます。
特典の享受とコミュニティ参加: 分配金に加えて、事業者の自社製品、地元産品、イベント招待、利用券など、多様な特典を受け取ることができます。また、イベント参加などを通じて、事業者や他の投資家との交流の機会が得られ、プロジェクトを共に進める仲間のような関係性を築けることも魅力です。
 
4-2. リスク:元本保証はなし。売上が伸びなければ分配も低い
事業投資型クラウドファンディングは「投資」であるため、リスクを伴います。
元本割れリスク: 出資金の元本は保証されていません。事業の不振や失敗、ビジネス環境の変化などにより、出資金の元本割れが生じるリスクがあります。
分配の変動リスク: 分配金は事業の売上に応じて変動するため、売上が伸びなければ、分配も低くなります。事業計画上の売上を著しく下回った場合や予想外の費用が発生した場合には、営業者の資金繰りが悪化し、分配金の支払いが遅延するリスクもあります。
事業者の倒産リスク: 事業者が支払不能に陥ったり、破産や民事再生などの法的倒産手続きに移行したりする可能性があります。この場合、匿名組合契約は直ちに終了し、投資家が持つ支払請求権は、他の優先債権者(金融機関など)に劣後して取り扱われるため、出資金の全部が返還されないリスクがあります。
 
4-3. 経営破綻・自然災害などの“非コントロール要因”も含まれる
事業の成功は、事業者の努力だけでなく、外部の要因にも左右されます。• 外部要因リスク: 大地震や津波、台風などの自然災害、伝染病や汚染による風評被害、さらには経営陣の不測の事態(病気・事故など)といった、事業者がコントロールできない要因が事業の継続に悪影響を及ぼすリスクもあります。
 

5. どんな人に向いている?投資家タイプ別の向き不向き

5-1. 社会貢献・地域貢献に関心のある人には特におすすめ
事業投資型クラウドファンディングは、特に以下のような人に向いています。
地域活性化や社会貢献に貢献したい人: 地域の魅力ある事業や、被災地応援ファンド、途上国向けマイクロファイナンスなど、社会的意義のある事業を支える「あたたかい資金」の出し手となりたい人におすすめです。
 
5-2. 高利回りより“意味あるお金の使い方”を重視する人向け
この仕組みは、単純な資産運用のための投資とは異なり、資金提供の動機に「誰かを応援したい」という情緒的な側面が強く含まれます。
「思い」に応える投資をしたい人: 資金提供者が、事業者の「思い」やビジョンに共感し、金融機関とは異なるリスク許容度を持って資金を提供する仕組みです。事業者の自社製品やイベント招待などの特典も含めて、金銭的な価値以外の価値も大事にしたいと考える人に適しています。
 
5-3. 短期的利益を求める人には向いていない
事業投資型クラウドファンディングは、短期間での利益獲得を目的とする人には不向きです。
長期的な視点が必要: 投資期間が数年にわたる場合があり(例:10年間)、流動性に乏しく、途中で換金できないリスクがあります。また、事業の成長や社会的なインパクトの創出には時間が必要です。
 

6. まとめ|共感でお金を動かす“応援投資”のあり方とは?

6-1. 投資先を「応援したいかどうか」で選ぶという判断軸
事業投資型クラウドファンディングは、投資家が事業者の「顔」や「思い」を理解した上で、「応援したいかどうか」を判断軸として資金を投じる新しい仕組みです。これにより、投資家は単なる傍観者ではなく、映画の「つくり手」のように、プロジェクトの当事者として深く関わることができます。
 
6-2. 資産形成と社会貢献の中間にある、新しい投資行動の形
この仕組みは、従来の金融(預金、上場企業への投資)とは異なり、個人が直接、中小事業者やベンチャー企業に資金を提供する道を開きました。金銭的リターンを得る機会と、社会や地域に良い変化をもたらすというインパクトを追求する、新しい「応援投資」の形として注目されています。
 

7.FAQ

Q1. 元本保証はありますか?
いいえ、元本保証はありません。事業投資型クラウドファンディングは「投資」であるため、事業の業績により、出資金の元本を割るリスクがあります。
 
Q2. どれくらいの頻度で分配金がもらえますか?
分配金の頻度や期間は、各ファンドの契約によって異なります。多くは「一定期間」にわたり年に1度、毎年分配されますが、プロジェクトによっては「期末一括分配」などとなるケースもあります。詳細は各ファンドの契約説明書をご確認ください。
 
Q3. 分配金には税金がかかりますか?
はい、匿名組合契約に基づく分配金は、投資家への分配額が匿名組合出資金額を超過した場合(利益が生じた場合)に、その利益に対して源泉徴収税(20.42%:復興特別所得税を含む)が徴収されます。
 
Q4. 途中で出資をキャンセルできますか?
一般的に、事業投資型クラウドファンディングは流動性に乏しく、クーリング・オフ期間を除き、途中で換金(中途解約)することは困難または禁止・制限されています
 
Q5. 応援した事業者が倒産した場合、どうなりますか?
事業者が破産、民事再生などの法的倒産手続きに移行した場合、匿名組合契約は直ちに終了します。この際、投資家の出資金返還請求権は他の優先する債権に劣後して取り扱われるため、出資金の全部が返還されないリスクがあります。


※ 事業投資型クラウドファンディング「セキュリテ」の仕組みについては、こちらからご確認ください。
※ セキュリテで募集中の「事業投資型クラウドファンディング」は、こちらのファンド一覧からご覧いただけます。


#事業投資型クラウドファンディング 

ニュースカテゴリ
アーカイブス
【ご留意事項】
当社が取り扱うファンドには、所定の取扱手数料(別途金融機関へのお振込手数料が必要となる場合があります。)がかかるほか、出資金の元本が割れる等のリスクがあります。
取扱手数料及びリスクはファンドによって異なりますので、詳細は各ファンドの匿名組合契約説明書をご確認ください。
ミュージックセキュリティーズ株式会社 第二種金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1791号 加入協会:一般社団法人第二種金融商品取引業協会
Copyright (C) 2025 Music Securities,Inc. All Rights Reserved.