2024年12月28日 09:00
「上司からの日本酒」 #大人の作文コンクール
皆さん、こんにちは。
ミュージックセキュリティーズの杉山です。
今日は、私が担当している「セキュリテ大人の作文コンクール 『日本酒の思い出』大募集」にご応募いただいた作品の中から1点、「人と飲むお酒が好き」という30歳のコバさんの作品をご紹介します。
「上司からの日本酒」
仕事のヘルプで 2 か月ほど仙台に出張に行くことになった。住居は会社が家具家電付き のマンスリーマンションを用意してくれるということ、これまでずっと一人暮らしだったこともあり私は何も考えずにそれを承諾した。
仙台の職場は6人ほどの小さな職場で、初めて出勤した朝礼で自己紹介を促された。緊張していた私は自分の名前を言った後、咄嗟に「好きなものは日本酒です!」と早口で言った。 確かに日本酒は好きだった。秋田出身ということもあり、お酒は得意な方で飲みの席ではよく飲んでいた。少々沈黙が流れ、「職場でお酒の話はまずかったかな・・・」と思った反面、 周りの反応は良く、早速その日のうちに日本酒の飲める居酒屋で歓迎会を開いてくれた。
「日本酒は何が好きなの?」そう聞かれ、「田酒です!青森の!秋田のお酒も美味しいです けど、1番は田酒です!」宮城を始めとした東北の地酒を堪能し、ほろ酔い気分の私はキャ ッキャと答えた。「秋田のお酒じゃないんかい!」という待ってましたのツッコミもあり、 その日は本当に楽しかった。
それからの仙台の仕事は想像を超える過酷さだった。忙しそうにPC操作する周囲の人た ちとは中々腹を割った話が出来ず、私自身も周りに気を遣いすぎてしまい飲み会の時ほど打ち解けることは出来なかった。特に私の心を鬱々とさせていたのは上司の存在だった。上司はいつも難しそうな顔をしており、寡黙な人を貫いていた。仕事はスマートだが、責任感が強く、他人にも自分にも厳しい人というのが彼に抱いた印象だった。
そんな生活が2か月続き、ようやく仕事に慣れてきた頃出張の終わりを迎えた。服と化粧品、最低限の日用品の入った大きな段ボール2つのみで仙台に来たため、戻る時も荷詰めは あっさりと終わった。「この2か月は何だったのか、私は本当にヘルプとして適任だったの か・・・」そんなことを考えながら仙台を後にした。
息の詰まる仙台の職場から現職場に戻 り2週間が経った頃、自分のデスクに段ボール包装された荷物が置かれていた。差出しは仙台の寡黙な上司からだった。仙台に忘れ物でもしたのかと思って開けてみると、中から緩衝材に包まれた「田酒一升瓶」が出て来たものだからあまりの衝撃に思わず声を漏らしそうになった。
添えられていたメモには「2か月間ありがとう。また一緒に飲みましょう。それまで田酒で凌いでください。」と丁寧な字で書かれていた。「田酒のこと覚えてくれてたんだ・・・」飲み会での一言を聞いてくれていたこと、覚えてくれていたことが嬉しく、少し涙が出そうだった。私は急いで上司に「田酒ありがとうございます。この量を一人で飲むには相当時間がかかるので、その前にまた仙台に遊びに行きます。また皆で飲みましょう」と メールを入れた。
それから数年経ち、私は仙台、上司は別の場所へ異動になった。あの一升瓶をもらってから何度も仙台で一緒に飲んだ。そこには寡黙とは無縁の、日本酒で少し顔を赤くした上司がいた。自分に厳しく、人見知りな上司は田酒の入ったお猪口を片手に微笑んでいた。
ミュージックセキュリティーズの杉山です。
今日は、私が担当している「セキュリテ大人の作文コンクール 『日本酒の思い出』大募集」にご応募いただいた作品の中から1点、「人と飲むお酒が好き」という30歳のコバさんの作品をご紹介します。
「上司からの日本酒」
仕事のヘルプで 2 か月ほど仙台に出張に行くことになった。住居は会社が家具家電付き のマンスリーマンションを用意してくれるということ、これまでずっと一人暮らしだったこともあり私は何も考えずにそれを承諾した。
仙台の職場は6人ほどの小さな職場で、初めて出勤した朝礼で自己紹介を促された。緊張していた私は自分の名前を言った後、咄嗟に「好きなものは日本酒です!」と早口で言った。 確かに日本酒は好きだった。秋田出身ということもあり、お酒は得意な方で飲みの席ではよく飲んでいた。少々沈黙が流れ、「職場でお酒の話はまずかったかな・・・」と思った反面、 周りの反応は良く、早速その日のうちに日本酒の飲める居酒屋で歓迎会を開いてくれた。
「日本酒は何が好きなの?」そう聞かれ、「田酒です!青森の!秋田のお酒も美味しいです けど、1番は田酒です!」宮城を始めとした東北の地酒を堪能し、ほろ酔い気分の私はキャ ッキャと答えた。「秋田のお酒じゃないんかい!」という待ってましたのツッコミもあり、 その日は本当に楽しかった。
それからの仙台の仕事は想像を超える過酷さだった。忙しそうにPC操作する周囲の人た ちとは中々腹を割った話が出来ず、私自身も周りに気を遣いすぎてしまい飲み会の時ほど打ち解けることは出来なかった。特に私の心を鬱々とさせていたのは上司の存在だった。上司はいつも難しそうな顔をしており、寡黙な人を貫いていた。仕事はスマートだが、責任感が強く、他人にも自分にも厳しい人というのが彼に抱いた印象だった。
そんな生活が2か月続き、ようやく仕事に慣れてきた頃出張の終わりを迎えた。服と化粧品、最低限の日用品の入った大きな段ボール2つのみで仙台に来たため、戻る時も荷詰めは あっさりと終わった。「この2か月は何だったのか、私は本当にヘルプとして適任だったの か・・・」そんなことを考えながら仙台を後にした。
息の詰まる仙台の職場から現職場に戻 り2週間が経った頃、自分のデスクに段ボール包装された荷物が置かれていた。差出しは仙台の寡黙な上司からだった。仙台に忘れ物でもしたのかと思って開けてみると、中から緩衝材に包まれた「田酒一升瓶」が出て来たものだからあまりの衝撃に思わず声を漏らしそうになった。
添えられていたメモには「2か月間ありがとう。また一緒に飲みましょう。それまで田酒で凌いでください。」と丁寧な字で書かれていた。「田酒のこと覚えてくれてたんだ・・・」飲み会での一言を聞いてくれていたこと、覚えてくれていたことが嬉しく、少し涙が出そうだった。私は急いで上司に「田酒ありがとうございます。この量を一人で飲むには相当時間がかかるので、その前にまた仙台に遊びに行きます。また皆で飲みましょう」と メールを入れた。
それから数年経ち、私は仙台、上司は別の場所へ異動になった。あの一升瓶をもらってから何度も仙台で一緒に飲んだ。そこには寡黙とは無縁の、日本酒で少し顔を赤くした上司がいた。自分に厳しく、人見知りな上司は田酒の入ったお猪口を片手に微笑んでいた。
いかがでしたでしょうか。
途中、少しそわそわするのですが、最後まで読むととってもハッピーな気分になる、そんな思い出でしたね。
さて、昨日で仕事納め、今年の年末年始は9連休という方も多いのではないでしょうか。
年末年始には日本酒を飲む機会も増えるかと思います。ぜひ日本酒を飲みながら、自分にはどんな日本酒の思い出があったか、この機会にゆっくり思い出してみてください。
日本酒ファンの皆さまと一緒に、「セキュリテ日本酒まつり」もどんどん盛り上げていきたいと思います。
日本酒の思い出も、いよいよ<1月15日まで>となってきましたが、まだまだ募集中ですので、多くの方からのご応募、お待ちしております。
#セキュリテ日本酒まつり2024 #大人の作文コンクール #日本酒の思い出
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