LIVING IN PEACE BLOG

日頃の活動2010年11月3日 16:13

アイ・シー・ネット株式会社河原氏・粟野氏のマイクロファイナンス講義

LIPは日本でもトップクラスのマイクロファイナンス機関(以下、MFI)調査団体を目指すべく、MFIの調査手法の研究を続けています。とはいえ、国内においてフルタイムで働いていることから、開発途上国に赴き現地の情報を収集することには限界があります。


828日(日)に、応援メッセージもいただいているICNETの粟野氏(マイクロファイナンス読本などの業績があります)及びご上司の河原氏をお招きし、マイクロファイナンス(以下、MF)業界との関わりやの調査手法など経験談を教えていただきました。両氏にはエキスパートとして、お忙しいところ我々の足りない部分を補ってくださったことに感謝申し上げます。

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粟野氏は1995年からMFの研究調査に携わり、1999年からジンバブエでMFIの調査研究やコンサルティング業務を行ってきました。MFIを支援する政府機関で、MFIへの経営・融資・財務管理能力の指導や、MFIへの低利貸付制度の改善などに従事されました。


当時のジンバブエのMF業界は、成長発展の余地があるにも関わらず、次のような課題を抱えていました。政府機関は不良債権の回収、MFIは規模の拡大・組織力の向上・財務的な自立・高利貸しとの棲み分け、商業銀行のMF業界への参入は一行しかない、等です。インフレ率は既に上昇傾向であったものの、まだMF機関が収益をあげられる状況だったそうです。

また、融資対象のMFIを選定するにあたってどのような基準でMFIを評価すべきか、という問題に直面されました。CGAP(世界銀行の貧困削減に関する調査機関)のMFI評価のためのガイドライン(こちら)やPlanet Rating(MFIの格付機関)の格付けレポートを研究され、Governance(企業統治), Strategy(戦略), Management(経営管理), MIS(経営情報システム), Outreach(貧困削減の達成度), Profitability(収益性)など10項目からなるMFIの評価基準を策定されました。これにより、MFIの評価が数値として表され、複数のMFIの客観的な比較対象が容易になります。

 

Planet RatingではGIRAFEという評価体系に従い、企業統治、情報技術、リスク管理、営業実績、資金調達、経営効率性の6つの評価基準からMFIを格付けしています。(出典はこちら

 

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当時は今よりもインターネットが普及しておらず、マイクロファイナンス情報に対するアクセスもずっと悪かったはずです。それでもMFIの評価基準を作ってしまったという事実に、ロールモデルとして勇気をもらわないはずがありません。


河原氏も元銀行員で、南太平洋の金融機関で働かれた経験があり、当時のご経験を聞くことができました。これだけでも十分勉強になったのですが、興味深いのは発展途上国ゆえの事例が紹介されたことです。 ローンの償却に関すポリシーがあるのに償却された実績がない、MIS(経営情報システム、ローン情報を記録するシステムのこと)を評価しようとしたら記録も保存していなかったこと、思わず笑ってしまうような事例が次から次へと現れました。評価基準が上手く機能する例と、そうでない例を同時に学べる機会は貴重でした。 MF機関での不正とそれに対する取り組みの例や、その背景についても全員で議論しました。職員の給与の低さ、地方の支店では本店の管理が行き届きにくいから、内部及び外部の規制や監査がしっかりしていないから、など、そのインセンティブ構造も話し合いました。日本国内で財務諸表や書類などを見ているだけでは、まずわからないことだったため、有意義な議論となりました。 この勉強会はあっという間の2時間だったのですが、定例会議が始まるまでフリーディスカッションをしました。1128日(土)に予定されているマイクロファイナンスフォーラム2010の報告について相談させていただきました。その中で興味深かったのが、『資金調達構造から見るMFIの規模及び寡占度』です。


LIP代表の慎が私の提言(こちら)で主張しているように、マイクロファイナンスファンドを組成するコスト(発展途上国に赴き、滞在し、現地調査をする費用)を考えると、どうしてもコストパフォーマンスの見合う規模の大きな投資に偏りやすくなります。


従って、ある国の大手MFIの海外資金調達は順調であり、そのシェアは圧倒的であると考えられます。一方で、中小のMFIは海外からの資金調達がより難しく、規模を拡大することが困難になるでしょう。結果的に、より営利性を追求できる大手MFIによって市場が寡占される一方で、貧困削減などソーシャルミッションを追求する中小のMFIといった棲み分け傾向があるのかもしれません。LIPが中小のMFIsを支援する根拠を客観的に示せないか、今後とも検討していきます。

 

粟野氏、河原氏の専門知識やご経験によって、LIPの能力が大きく強化され、メンバー一同刺激を頂いたことに感謝しております。

両氏はじめとする多くの方々のご支援のおかげで、今のLIPがあります。末筆乍ら、厚く御礼申し上げます。

 

文責 理事 菅原崇 @takashifc

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