お知らせ 途上国未電化家庭用太陽光システムファンド

2018年6月2日 05:51

気候変動問題: パリ協定のエッセンス

サポーターの方が 400人 を超え,現在 407人となりました.どうもありがとうございます.
 
ちょっといろいろ忙しくて,ブログの更新が滞っていて申し訳ありません.
 
わたしは,この 途上国での SHS 普及プロジェクトのほかに,気候変動問題の研究者でもあり(四半世紀以上 気候変動問題に携わっています.このSHS プロジェクトもそのひとつですね),そちらの仕事が非常に重たくなっていました.寝る間もない... あと二週間くらいで終わる予定で,ラストスパートです.
 
もちろんSHS のコントローラー開発の方も進めています.土曜日のきょうも打ち合わせで,もうすこし具体的なイメージができたらお知らせいたします.
 
このプロジェクトを応援いただいている方々は,途上国開発問題とともに,気候変動問題にも関心の高い方が多いのでは?と推察しています(そうですよね?).そこで,今回は「パリ協定」の話をすこしいたしましょう.そのエッセンスは何か?そしてわたしがそのために,どう考えているか?という点になります.
 
 
気候変動問題に対応するための国際的な枠組みは,「国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)」という国際協定です.「京都議定書」もそうでしたが,「パリ協定」もその子供の国際協定です.次男坊ですね.
 
気候変動問題は,先行した成層圏オゾン層破壊問題が,

包括的な枠組条約 → 法的強制力のある議定書(モントリオール議定書)

と強化していくアプローチが成功したのを受けて,それと類似のアプローチを採りました.それが長男である京都議定書でした.
 
ただ,対象セクターが狭く,代替物質が開発され,規制が比較的容易であるこの先駆問題とは異なり,エネルギー消費に直結した気候変動問題では,そう簡単にはいきませんでした.京都議定書で先進国に対しては法的強制力の形で排出規制を課すことができたのですが,これからエネルギーを使って経済成長をしていこうとする途上国に法的強制力を持つ排出規制を拡大していくことには失敗しました(コペンハーゲン会議です).
 
それを受けて,各国が自主的に目標を設定・宣言し,それを自主的な方法で遵守するというアプローチを,次男であるパリ協定では採択しました.ただし,後退したわけではなく,

・ 1.5~2℃という具体的な気温上昇に対するゴール(産業革命前比です)が設定されました.
・ 途上国も含むすべての国が対象となっています.
・ すべての国が,5年ごとに目標を策定し,コミットしなければなりません(NDCと呼ばれます).
・ グローバルストックテイク と呼ばれる世界全体の排出目標の方向性確認が,上記の各国のNDCを合算することで 同じく 5年ごとに行われることになりました.それによって各国がより厳しい目標にコミットし対策を強化していくことが期待されています.
・ NDC目標の進捗状況などが,2年ごとに各国から報告され,それを審査するプロセスが用意されます(既存にもあるのですが強化されます). という特記すべき特徴や制度立てが用意されることになりました.
 
その他,

・ 適応策,REDDプラスという森林対策,Green Climate Fundに代表される新しい財政サポートチャンネルといった制度立てが用意されてきました.
・ MRVと呼ばれる定量化手法の重要性が認識されてきています.
・ 省庁間コーディネーション体制が強化されてきています.
・ 市場メカニズムも導入されます.

といった 一種の「進化」が,紆余曲折を経ながら,起きてきています.
 
コア部分は,
地球全体の気温ゴール設定 
← 5年ごとの グローバルな方向性のチェック 
← 各国で 5年ごと に目標(NDC)設定 
← 各国で 2年ごと に NDC目標への進捗チェック・報告
← 各国で対策を実施

というような形になります.
 
5年ごとに,グローバルに,1.5~2℃目標 にちゃんと向かっているかのチェックし,それが各国の目標強化へのプレッシャーになる... というのは,一種のPDCAサイクルのようでもありますが,実は,「目標」言い換えると「ambition」の方向性のチェックプロセスであるわけです.
 
「目標」だけが ”一人歩き” しても困るわけで,しっかり「実績」が伴わなければ,パリ協定は羊頭狗肉になってしまいます.
 
これをチェックするプロセスが,2年ごとに行われる「透明性枠組み」として用意されることになります.逆に,これが機能しなければ,ベースが揺らいでしまうことになります.
 
では,各国はどのような「報告」をすれば,各国が目標を達成し,強化していくことができるのでしょうか?そもそも,(それが審査されるとはいえ) 報告するだけで,達成できるのでしょうか?
 
この点に焦点を当て,いままでにない考え方や方法を提案したのが,わたしの論文です.日本語は,ここ にありますので,ご興味があればご覧下さい.いま,より包括的なレポートも作成していて,IGES の Flagship Report のひとつとして,ISAP という国際フォーラムでリリースされます.

基本的な考え方は,各国からの報告を 単なる報告ではなく,それを作成するプロセス自体が

・ 目標達成への進捗評価を行いやすく,理解しやすいこと;
・ 自国の国内対策を有効に進めることを促進すること;
・ 自国の目標を,定量的によりよく理解し,意味をきちんと把握できるようになること;
・ 各国の経験や教訓をシェアすること;

となることを企図します.みなさんも,なにかを文書化することが,自分の能力開発にとってとても役に立った... という経験を持ちでしょう?その効果を最大限活かそうとするものです.

そしてそれを,制度デザインとして,ルールに埋め込むという国際制度設計提案になります.
 

いま,まさにパリ協定は,その詳細ルール(運用則)を策定するプロセスにあります.今年末にポーランドで開催されるCOP 24 において,それが採択される予定になっているため,いまがんばって,世界に向けて発信しているところです.むかし CDMのときには それなりに提案が採用されたので,今回も うまく制度の中に 組み入れてもらえるといいのですが... 
 
 
 
7月 19, 20日に横浜で開催される IGES ISAP においても,議論するセッション を設けます.昨日から申し込みが開始しましたので,よろしかったら,ご参加ください.

松尾 直樹

 

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2018年5月2日 13:27

ソーラーホームシステムのグラミンシャクティの成果と課題

サポーターの方が,378人,そしてついに目標出資額の 50% に到達いたしました.ありがとうございます!
セキュリテに登録されてから いままで ほぼ3ヶ月半でした.とはいえ,まだ道は半ばです.これからもよろしくお願いします!
 

さて,このブログを読まれている方は,途上国の貧困問題や開発問題に関心が高い方が多いと思います.この分野の方々にとって「グラミン」という言葉は,「ユヌス氏」とともに,一種のカリスマ的存在と言えるかもしれません.
 
バングラデシュで,ムハマド・ユヌス氏と,彼の設立したグラミン銀行は,貧しい人々に無担保で少額融資を行い,彼らが自立できるきっかけとなるマイクロクレジットを始め,大規模で展開することに成功しました.その成果を讃え,2006年には両者にノーベル平和賞が贈られました.ちなみに,グラミンとはベンガル語で農村という意味です.
 
ユヌス氏は,金融業をやりたかったわけではなく,バングラデシュの人々,とくに貧しい人々の開発と自立を目指していたため,金融以外のさまざまな側面での活動を行っています.これらはグラミン・ファミリーと呼ばれ,営利・非営為で小さなものまで含めると50以上の団体から成ります.その中で,グラミン銀行に次いで大きな組織が,グラミンシャクティと呼ばれる組織です,シャクティとは,エネルギーという意味です.下のムービーをご覧下さい.
 
 
われわれは,このグラミンシャクティと,2010年以降,いろいろな形で協同してきました.最大のものは,IDCOLという政府系非バンク金融機関がスーパーバイズしている家庭用バイオガスプログラムプログラムを,グラミンシャクティ および IDCOLと,プログラムCDM化したことでしょうか.グラミンシャクティーは,このプログラムの最大実施者で,あとでIDCOL が割り込んできたというのが実態です.CDMというのは,京都議定書の下で 排出権を生み出す市場メカニズムです.通常はひとつのプロジェクトからの温室効果ガス(GHG)削減量を排出権化するのですが,プログラムCDMでは,家庭用バイオガスのようなひとつひとつは小さな活動をたくさん集めたプログラム自体を,ひとつのCDMプロジェクトとして扱うものです.少し難易度が高くなりますが,わたしの得意技ですね(笑)

JICAのBOPビジネスの最初のラウンドに採択され,マイクロユーティリティーという農家がバイオガスをチューブで隣近所に供給するユニークなビジネスモデルの可能性を探ったのですが,鳥インフルエンザリスクなどでうまくビジネス化はできませんでした.よろしかったら,ここ から報告書をダウンロードして,ご覧下さい.

ちなみに,このプロジェクトのCDM関連文書は,ここ にあります.

 
グラミンシャクティに代表される バングラデシュの未電化家庭対象のSHS普及プログラムは,現在までに約400万世帯に普及し,世界でほぼ唯一成功している政府系SHSプログラムです.

これに関しても,なぜ成功したか?という点を,JICA調査報告書 で,分析しましたので,ご興味のある方は,ご覧下さい.

 
バングラデシュのこの政府プログラムも,前述のIDCOLがスーパーバイズしていて,そのプログラムの下で 50程度のディストリビューター(パートナー機関と呼ばれています)が,全国津々浦々までオフィスを展開し,ユーザーである未電化家庭に対し,SHS販売と,分割払いのできる金融サービスを行っています.毎月の資金回収と機器チェックを融合した非常に優れたマネージメントシステムやデータベースを有しており,またビジネスモデルを構築していて,それがバングラデシュモデルが成功してきた大きな理由となっています.
 
 
実は,このIDCOLのシステムは,もともとグラミンシャクティがそのベースを構築し,運用していたものを,IDCOLが応用したものでした.グラミンシャクティは,IDCOLプログラムで導入されたSHSの 1/2 近くを担い,圧倒的な存在感を持ってきました.

という成功事例としての側面は,ときどき見かけるのですが,実は,最近,グラミンシャクティは,そのビジネスにあえいでいます.その主流であったSHSプログラムに関する いままでのビジネスモデルが成り立たなくなってきたわけです.

たとえば,グラミンシャクティは,村の女性を教育して,SHSのコントローラー製造やメインテナンスを行ってきました(下の写真).ですが.このモデルは中国の安価なコントローラー輸出によって破綻し いまは細々と修理だけです.
 
 
なによりも大きいのは,テロにも関係したのですが,バングラデシュを襲った経済不況の影響がありました.
加えて,当初から対象としてきた比較的お金を持った層が一巡し,SHS購入が難しい層が残されたことです.

その他,さまざまな理由が悪い方にはたらき,現在では,グラミンシャクティは,事業縮小と共に,SHSは買い換え需要のような新しいタイプを模索していますし,IDCOL自体はプログラムの出口戦略を考えてきています.

このような状況において,われわれは,バングラデシュにおいてはどのようなビジネス展開を想定しているか?という点が課題になってきます.

もちろん,縮小したとはいえ,グラミンシャクティは大きなパワーを持っていますし,ぜひ彼らの事業が成功していけるように わたしも強く思っています.
 
いくつか腹案はあるのですが,それがうまく機能するかどうか,もうすこしトライアンドエラーが必要となってくるでしょう.
 

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2018年4月5日 10:59

貧しい人々は収入が増えるにしたがって何が欲しくなってくるでしょう?

しばらくご無沙汰していてすみません.年度末の忙しさと,プロポーザル作成が重なってしまいました.むかしと違って最近は徹夜はしんどいです...
 
前回からいろんなことがありました.ひとつは,サポーターの方々が 300人 を超えました.どうもありがとうございます!現在 317人 で,目標の 44% です.もうすこしで50%ですね.いつの間にか,現在募集中のセキュリテ案件の中で,もっともサポーターの多いファンドになりました.ただ,目標はまだ先で,おそらく 1,000人 近くの人にサポートいただくことが必要になると思います.よろしくお願いします.
 
EGAOプロジェクトは,PAYG技術導入関係でいろいろあったのですが,まだon-goingですので,みなさんにお話しできるようになったら,お話しします.
 
きょうは,途上国の地方の貧しい人々が,どういうように自分の Quality of Life を上げていこうとしていくか?という点を考えてみましょう.
 
ご年配の方々は,昭和の時代に,わたしたちが高度経済成長の時代,どういった生活をして,なにを求めていたか?を思いおこして下さい.
 
そうです,1950年代後半からでしょうか (わたしの生まれるすこし前です),家電の世界では,三種の神器 と呼ばれるものがありました.白黒TV,洗濯機,冷蔵庫 です.その中でも 白黒TV がもっとも早く普及しました.うちにも一台ありました.おとうさんは,最初に白黒TVを買ってきたときは,たいそう嬉しく,また誇らしかったことだと思います.それ以降,TVはずっと一家団欒の中心にありましたね.
 

 
さて,この日本の昔と,わたしたちが対象としている いまの途上国貧困地域とは,どのように状況が違うのでしょう?
 
ひとつは,日本はすでに,電気が普及していたと言うことです.日本の電力会社の歴史は,それだけでとても興味深いですが,それはおいておいて,この 電気がどこででも使える状態にあったことは,日本の経済成長に大きな意味を持っていました (電気が使えることは とても重要なのです).
 
もうひとつは,いまの途上国は,最初に入ったのが 携帯電話 ということでしょうか.固定電話のステージを経ずに,直接 携帯電話が来ました.いまはスマホに移りつつあります.日本のむかしの電話は,固定電話でしたが,最初のネットワークへの接続料金が高い(当時10万円近くした記憶があります)という点では,アフリカの電気の現状に近いと言うことが言えるでしょうか.
 
細かな点でしたら,白黒ブラウン管TV はもうなく,液晶カラーTV になります.
 
いまの若者は,スマホでインターネットの YouTube なのかもしれませんが,途上国では,これから 大画面カラーTV に向かっています.都市域でしたら,もう実現化していますね.これが「望み」であり「ステータス」でもあるわけです.
 
この波をとらえるべく,EGAO も TV駆動 できるものとしてデザインしていることは,ご存じですよね.未電化だからといって,リープフロッグ(蛙跳び) 的に「TVのある生活」が手に届くようになるわけです.夢のような変化でしょう.
 

さて,せっかくですので,その次にくるものは何か 考えてみましょう.
 
わたしは,冷蔵庫 だと思います(冷房関係も重要ですが,扇風機は難しくありません.エアコンははるか先です).
 
冷蔵庫は消費電力は大きくないのですが,24時間動いていますので,合算した電力量という点では大きくなってしまい,さらに大きなソーラーホームシステムが必要となります.
 
実は,わたしの友人で非常に優秀なエンジニアの坂下さんという人が居るのですが,彼は,60℃くらいの熱から,直接(電気への変換を経ずに)冷熱を生成する 吸着式クーラーの超小型化技術を持っています.日本でしたらカーエアコンにベストフィットですが,途上国の暑くて電気のない家庭の人々の冷蔵庫にも,最適ですね! あとすこし「技術的詰め」が必要ですが,2, 3年後には実現化したいと思っています.
 
もうひとつついでに,途上国の主要産業は農業ですが,途上国にはコールドチェーンがないので,採れた野菜や果物の なんと 1/2 は腐って捨てられてしまいます.タイのような発展段階の比較的高い国でもそうです.これを解決する技術も開発しました.通常は,冷蔵装置は,低温になると乾燥します(エアコンでご存じですよね).一方でこの技術では,低温でも「高湿度」が実現可能です.野菜・果物・花 などの貯蔵や輸送に最適な技術です.この冷蔵装置を汎用のコンテナに組み込んだ「動く冷蔵庫」プロジェクトです.
 
このプロジェクトのお話しも,途上国の社会開発にとって,非常に意味の深い案件ですので,おいおいご紹介いたしましょう.

松尾 直樹
 

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2018年3月17日 17:31

製品開発の現状[コントローラーへのPAYG機能の組み込み]

現在,291人の方々にサポートいただき,ターゲットの41%という状況です.どうもありがとうございます!20口というようなレベルで出資いただく方もおられ,感謝しています.よろしかったら,インパクト投資,途上国開発,気候変動問題,再生可能エネルギーなどに,ご興味を持ちそうなお知り合いの方々にもお声かけいただければさいわいです.
 
3/14に あのSteven Hawkingさんがお亡くなりになりました.実に偉大な魂と呼ぶべき存在でした.わたしが院生の頃,京都で講演をお聴きしたときにはすでに病状はかなり進んでいましたが,まだ指を動かすことができ,まわりの近しい人にだけわかる言葉でしたが,話もされていました.一見分かりにくかったですが,よく笑っておられたように思います.
 
実はわたしも,大学院で彼と近い分野の研究を行っていた時期があり (量子重力という点では共通です. 彼は宇宙論でわたしは素粒子論でしたが),いまでも彼の “Wave Function of the Universe (宇宙の波動関数)” というプレプリントの大胆な発想に衝撃を受けたのを覚えています.紙に書くことができないのに,どうやって計算をされているのだろう?というのも不思議でした.逆にだからこそ,あのような大胆な発想ができたのかもしれませんね.
 
 
さて,年度末でもあり,いろいろ忙しい状態が続き,ニュースも間が空いてしまいがちなのですが,今回は,製品開発状況に関してご報告いたしましょう.
 
SHSは,コントローラーと周辺機器から構成されるシステムです.周辺機器(太陽光パネル,LED室内照明,懐中電灯兼用型スマホバッテリー,各種ケーブル,TV)は,すでに開発や準備ができており,現在は,もっとも重要なコントローラーに集中しています.
 
コントローラーは,73Wh もしくは 136Wh のリチウムイオン電池(およそノートPCの電池容量相当 もしくは その2倍)を搭載し,太陽光パネルもしくはAC電源からの電力を電池に充電し,制御した形で需要機器に供給する まさにシステムの中核部分を成す装置です.
 
内部回路設計はほぼ完成していて,残るは
  • ・ 筐体デザイン(100mm×110mm×210mm の角柱型+取っ手)
  • ・ PAYG機能の組み込み
の2種類となっています.
 
筐体デザインは途中段階ですが,現時点では以下のようなイメージです:
 
 
PAYGは,Pay-As-You-Goの略で,ユーザーがお金を支払った分だけ使うことができるようにする機能です.分割払いはユーザーの所得水準を考えると ほぼ必要条件とも言えるものですね.現在,この技術提供をする海外の企業と議論を進めている状況です.
 
PAYGにはいくつかの方式があります.SIMカードを使って外部から遠隔でコントローラーの ON/OFF を行ったり 双方向情報交換を行う方式は,スマートではあるのですが,いくつかの課題があるため,現行モデルでの採用は行わず,ユーザーがアクティベーションコードを手入力する方式を採用することとしました.入力デバイスは赤外線リモコンか,本体へのテンキー取り付けか,ですが,後者を採用する予定です.
 
この方式は,ユーザーの支払いを受けて,ディストリビューターがSMSでアクティベーションコードを送付する方式です.支払い状況データベースとアクティベーションコード生成などは,その企業が ディストリビューターに対して提供するサービスとなります.
 
この機能の組み込みは,こちらの状況に応じた機能がプログラムされたマイクロチップのドーターボードを,現在のプリント基板に接続し,そのシグナルがLEDインディケーターとして,外部に表示されるようにする必要があります.これらの作業に最低でも3ヶ月要するということなので,3Dプリンタを用いたプロトタイプの完成が6月いっぱいくらいかかりそうです.
 
それがほぼできた状態で,各国を回って (あるいはその他の方法で),ディストリビューターなどの各種販売チャンネルと議論をしてこようと思っています.
 
ちなみに,EGAO は,不安定なグリッド地域での利用も想定し UPS (無停電電源) 機能まで付いている高性能な設計ですが,各国で異なるプラグ形状やACの電圧 (アウトプット) には,その国に合わせたものとして提供することで対応します.日本での防災用やアウトドア用にも十二分に対応可能ですね.
 
松尾 直樹
 

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2018年3月6日 01:53

エネルギーアクセス問題に関する Webinar のすすめ[今晩です!]

現在,279人のサポーターの方々に支えられ,目標の37%に到達しています.がんばってさらに多くの方々にもサポートいただけるように,このニュースの配信や,実際のビジネスの準備を進めていきますので,もし周りに興味を持っていただけそうな方がおられましたら,お声かけいただけると幸いです.
 
エネルギーアクセス問題は,電気では 11~12億人(未電化だけでも),調理用熱エネルギーだと 実に 28億人もの人々が対象となり (ガスが使えない家庭),SDGs (Sustainable Development Goals) の Goal 7 (Energy) の説明 “Ensure access to affordable, reliable, sustainable and modern energy for all” に顕わに表されている 世界全体にとっては 非常に大きな問題です.
 
ただ,日本は JICAは大規模発電所および基幹送電線を援助の主軸とし,最近は 分散型とくに家庭用のソーラー製品への関心が薄れ,熱エネルギーに至ってはほとんど関心ゼロです.企業も この分散型エネルギーアクセス分野で事業化を成功させているところはなさそうです.
 
 
関心が薄い... のかもしれません.一般に日本人は (わたしも含めてですが) 外国人の中に入って積極的に議論していくことは得意ではありません.ただ,関心が薄いかどうかは,別の問題だと思います.関心はあるのだけど,どんな情報が入手可能かわからない... という方も多いと思います.そのような方のために,できるだけこのニュースで紹介していければと思っています.
 
 
この「ニュース」において,エネルギーアクセスに関して,いくつか英語のレポートで興味深いものを紹介してきました.

さいわい,
エネルギーアクセス問題にクラウドファンディングを活用する

未電化状態の人々の暮らしの実態ってどんなのだろう?
に紹介したレポートに関するWebinarが,ともに「今晩」開催 されます.Webinarというのは,Webでのセミナーという意味ですね.
 
わざわざ特化した内容のプレゼンテーションを,無料で行って,おうちで参加できるのですから,ぜひ ご覧になってください (この手のWebinarに,日本人の参加が少ないのも哀しいことです).わたしの はしょった説明より,書いた本人の説明の方がずっとリッチな内容になっていると思います.
 
前者の “Crowd Power, Success & Failure – The Key to a Winning Campaign” に関しては,
3/6(火)        19:00–20:00
ご登録は こちら です.
 
後者の ”Escaping Darkness—Understanding Consumer Value in PAYGo Solar” に関しては,
3/7(水)        0:00–1:00
ご登録は こちら です.
 
できるだけ「早めに」ご登録ください.
 
それでは.
 
松尾 直樹
 

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2018年2月28日 16:00

ソーラーホームシステムは電気が来ているところより高い?

貧しいひとは,貧しいが故に さらに高いコストを支払わなければならないことが ままあります.

われわれのソーラーホームシステムも,kWh ベースで考えたら,電力網(グリッドと呼びます)の電気より高く付いてしまいます.電池が必要なこと,ソーラーベースの発電であることから,容易にご理解頂けるかと思います.
 
東南アジアでは,たとえばベトナムは 他の同程度の経済水準の国より早く ほぼ100%近い電化を達成しています (わたしはこれがベトナムの強さに繋がっている要因の一つだと思っています).アフリカや南アジアの国々も,いずれは電化率が上がって未電化状態の村落は少なくなるでしょう.でしたら,それを待ってから,安い電気を使った方がいいのでは?という考え方もできるでしょう.これはいい考え方でしょうか?
 
結論から言うと,少なくとも物価の高いアフリカの場合 (アフリカは製造業が弱く輸入頼みであるため 物価が高いのです),電気が来た場合と比較しても,EGAOシステムは,十分に比較優位があります.
 
アフリカは電化率が低いのですが,電気が近くまで来た場合,まず必要なのは「接続料金」です.日本でも,年配の方は電電公社から最初に電話回線をもらうとき,10万円近くの料金が必要だったのを覚えておられるでしょう.アフリカの電気に関しても,似たような状況で,数千円から数万円もの接続料金が最初に必要となります (電化率が低い国が接続料金が高い傾向にあります).国によっては,これだけでEGAOが十分に買えてしまいますよね.電線の引き込みにさらにお金が要る場合もあります.また,分割払いがどの程度許容されるかも問題ですね.
 

 
もちろん,これは「初期コスト」で,いわゆる毎月の電気代は別です.kWhあたり10円程度の国から,50円程度の国まであります.それから電気製品(電球やTVなど)は別に購入しなければなりません.
 
EGAOは,設計上,通常の使用状況では 5年以上は使えます.もちろん電気代フリーですし,初期費用は分割払いができます.
 
電気が来たとしても,停電がかなりの頻度で起きるケースが多く,またサージという現象で,電気製品がダメになってしまうことも多いのです.停電が困る場合には,ディーゼル発電のバックアップを備えるわけですが,これもかなりのコストを必要とします.
 
それから,忘れがちなのは「機会コスト」です.すぐに電気が来ればともかく,数年程度待たざるをえないケースも多々あります (そしてそれが遅れるケースも非常に多いです).子供にとっての数年間は,非常に大きな影響を持ちますよね.



その他,
  • 明るい「部屋」 (Basic Quality of Life)
  • ケロシン代節約
  • 携帯電話充電費用節約
  • TVを愉しめる
  • ラジオ,扇風機,冷蔵庫
  • 労働効率の向上
  • 家事が容易,明るい台所
  • 灯油やロウソクによる火事防止
  • 屋外の安全
  • 夜間家内手工業等による現金収入
  • 店舗営業時間の延長による現金収入
  • 携帯電話充電ビジネスによる現金収入 
のような多くの機会を,その期間,逸するわけです.


 
ということで,EGAOを購入して,すぐに活用することは,彼らにとって非常に大きな意味を持つのです.
 
松尾 直樹
 

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2018年2月23日 08:39

セキュリテ型クラウドファンディングと社会インパクト投資の親和性

サポーターの方々が 250人を超えました!いまセキュリテのプラットフォームで募集中のファンドで3番目の数になります.どうもありがとうございます!とはいえ,まだ 目標の 1/3 弱 ですので,がんばらなければ...
 
サポーターの人数に増加速度が,最初の頃の勢いが鈍ってきたので,みなさん,お知り合いでこのプロジェクトに興味・関心を持ってもらえそうな人々に,教えて上げていただければ幸いです.
 
 
今回は,われわれが,クラウドファンディングを利用する意味を考えてみましょう.クラウドファンディングは,言うまでもなく,crowd すなわち多くの方々からの資金調達を意味するわけですね.おなじ 2,000万円の資金を調達するのに,ある投資家や銀行などから調達することと比較して,多くの人々にサポートしてもらう「意味」って何でしょう?1,000人の方々にサポートしてもらうことって,一社に投資してもらうより,ずっと素晴らしいことという気がしますよね?
 
それは,とりもなおさず,1,000人の方々といっしょになって この社会問題の解決をシェアすることを意味するからでしょう.まさに「インパクト投資」に合ったアプローチですね.
 
ビジネス的な言い方をするなら,ファンづくりのツールであるという言い方もできますが,みんなで盛り上げて成功させよう,という応援歌をわれわれは受け取っているわけです.
 
昨日の平昌オリンピックのスピードスケートの女子パシュート,とても感動的でした.わたしはサッカーが好きで W杯に観に行ったりもしますが,このような「チームスポーツ」は,個々人の能力限界をチームになることで 何倍にも引き上げることが可能になり,またそれが人々を感動させるのだと思います.クラウドファンディングは,資金調達の一手段であるわけですが,きっと同じ感覚なのだと思います.
 

セキュリテのアプローチは,プロジェクトへの投資型です (リターンはお金です).企業やそのポートフォリオだと対象がぼやけてしまいますし,融資型よりもダイナミックです.寄付型は「施し」になってしまいます.製品購入型も目指すところが違いますね.ということで,われわれはセキュリテのプラットフォームで,また一口の金額を抑え,参加のハードルを下げました (それによって集まる金額のスピードは鈍るかもしれませんが,確実により多くの人にサポートいただけるでしょう.もっとも 平均 2.5口 と みなさんの気持ちの強さが伝わってきます).
 
「きちんとリターンを返す=ビジネスが成功する」ということですので,そのためにがんばります!


セキュリテにはじめての方には,ちょっとファンドの仕組みが分かりづらい という意見もうかがっています.
 
まず,「特典」とは あくまで「おまけ」です.メインは,あくまで金銭的リターンです.そのあたり,Kickstarterなどの製品購入型と大きく考え方が異なります.すなわち,セキュリテでは「特典」は,出資額より意図的にかなり小さく抑えられています (このファンドでは 20% 程度ですね).
 
どの程度のリターンが見込まれるか?という点に関しては,ファンドのページ https://www.securite.jp/fund/detail/4137 の「ファンド情報」をご覧下さい.
 
投資いただいた資金を使ってSHSを製造,その販売益から,みなさんにリターンをお返しするわけです.「分配シミュレーション」のタブの,下の方の表をご覧いただければ,このプロジェクトの場合,事業計画では「110%の償還率」となることを想定しています (源泉徴収で 2% 差し引かれますが).
 
「募集情報」のタブにあるように,ファンドが目標額を集め終わり 成立してから,2年後に,リターンをお返しすることになります.
 
ただ,成立するためには条件があり,それが「リスク」タブの「18. 未成立のリスク」です.製品の具体的受注ができてはじめて,ファンドは成立します.
 
もちろん,未成立の場合には,出資頂いた金額は,そのままお返しすることになります.
 
本当は,このような「ファンド」の契約等に関する説明を,われわれが行うことは望ましくなく (不正確な言い方になるでしょう),上記の説明は,Webに書いてある文面が正確ですので,そちらをご参照ください.そして質問がありましたら,わたしではなく,セキュリテの方まで問い合わせて頂きますよう,お願いいたします.
 
いずれにせよ,せっかくこのプロジェクトという「共通項」を通じてお知り合いになれたのですから,これからもよろしくお願いいたします.

おそらく,このプロジェクトに興味を持つ方は,気候変動問題,再生可能エネルギー,エネルギー問題,途上国の経済発展や国際協力 などにも興味をお持ちだと思いますので,そのあたりのお話しも (けっこう深いところまで) またしていきましょう.
 
松尾 直樹
 
P.S.
来週は 気候変動枠組条約関係の仕事で ボンに行きます.ちょっと間が空いてしまったらごめんなさい.
 

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2018年2月17日 20:02

本質的な気候変動問題対策とはどういったものだろうか?

平昌冬季オリンピック,胸躍る熱戦が続きますね.その中でも,きょうのフィギュアスケート男子の日本のワンツーフィニッシュは圧巻でした.純粋に自分の大切だと思うものに集中することのすばらしさは,スポーツが人々の心を捉えてやまない理由です.わたしたちも,他の分野でしょうが,そうなりたいものです.
 
きょうは,このプロジェクトとはすこし離れて,気候変動問題(=地球温暖化問題)の視点からすこし語ってみましょう.
 
わたしは四半世紀以上,気候変動問題(とエネルギー)の専門家をしてきています.京都議定書にも寄与しましたし,現在のパリ協定の国際制度設計にも寄与すべくがんばっています.
 
実は,気候変動問題の専門家・研究者や評論家的な人は多いのですが,「自分で (個人としても)」何らかの「活動」を行っている人はかなりレアケースです.開発問題の大学の先生もその傾向があります.実際のアクションを起こすことは,自分の「役割」ではないという考えかもしれませんが,せっかく豊富な知識を持っているのですから,できたら「実践」してもらいたい,そういう姿勢を持ってもらいたいものですね.
 
気候変動緩和策とは,ほぼ CO2削減策であり,エネルギー削減アクションを意味するわけですが,そのようなアクションを促進するより,本当は,もっとずっと大切なことがあります.それは,CO2排出が少なくて済む社会の構築です (選択 という表現がベターかもしれません).
 
ん?同じことでは?と思われるかもしれませんが,そうではありません.
たとえば,自動車をベースにした社会を選択するのか?あるいは公共交通をベースとした社会を選択するのか?というのは,CO2削減策として考えるべきものではなく,社会の交通システムをどのようにデザインするか?という問題です.ですが,CO2の意味合いにおいても,非常に大きな意味を持ってくるわけです.
 
すなわち,CO2問題のことを考えなくとも,自然とCO2排出が少なくて済む社会こそ,目指すべき社会なのです.
 
同じようなことは,エネルギー供給システムに関しても言えますね.
 
これから 電気を使って より多くの機会を得ていこうという 10億人を超える人々に,CO2フリーな太陽光エネルギーによる電気を使ってそれを達成できるようにすること,すなわちこのプロジェクトの目指すところも,そのような視座に基づいた活動なのです.
 

松尾 直樹
 

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2018年2月11日 05:54

エネルギーアクセス問題にクラウドファンディングを活用する

サポーターの方が 現在 233人で,目標額の 30%に達しました.スタート以降,ほぼ1日に10人の割合でサポーターの方々が増えています.どうもありがとうございます!人数もそうですが,平均2.5口を超えるということで,みなさんのご期待を強く感じています.
 
さて,きょうは,「エネルギーアクセス問題」すなわち電気やガスにアクセスできない人たちの問題への対処に,クラウドファンディングを活用することのレポート “Crowd Power, Success & Failure – The Key to a Winning Campaign” がリリースされましたので,その概要をかいつまんでご紹介いたしましょう (図表が英語ですみません).
 
いうまでもなく,セキュリテは,事業者にとって広く多くの人から資金調達を行うクラウドファンディングのプラットフォームです (クラウドとはcrowdであってcloudではありませんね).とくにプロジェクトへの投資という形を取り,従来からよくある商品購入型ではなく,また企業への投資でもありません.
 
その意味で,この「途上国未電化家庭用太陽光システムファンド」は,「家庭用ソーラーホームシステムを開発し,途上国貧困層へ電気を届ける」というエネルギーアクセス問題に切り込むプロジェクトの資金調達を,クラウドファンディングで行う一例となっています.
 
類似した事例は,世界でどのようになっているのでしょうか?
 
クラウドファンディングでは,それを行う「場」を提供する「プラットフォーム」(たとえば セキュリテ です) と,個々の「キャンペーン」(たとえば 途上国未電化家庭用太陽光システムファンド です) という2つの概念を理解する必要があります.資金調達を行う主体をキャンペーン・メーカー,資金調達を実施することを,キャンペーン・エグゼキューションと呼びます.
 
クラウドファンディングの主要なモデルは,以下のようなものです:
 

 
Donationは寄付型,Rewardは何らかの報奨がなされるもの (商品型),Debtはローン型,Equityは株式投資型 ですね.セキュリテの方式は,ぴたりと合うものはありませんが,プロジェクトへの投資という点や,ファイナンス規模の点でEquity型として分類されているものにもっとも近いと思います.
 
このうち,実際に「エネルギーアクセス問題に関するキャンペーン」に用いられたプラットフォームは以下の通りです (2016年):
 

 
大きなもののほとんどがローン型ですね.ローンは途上国におけるプロジェクト (KIVAの場合で個々のキャンペーンはかなり小さい.ちなみにわたし個人も融資しています) や,途上国の中小企業に対するもの (それなりの規模のキャンペーンですね) に分かれます.ただこの表には,Equity型は含まれていないようです.ちなみに PEAR のキャンペーンは,2,000万円 (18万ドル) です.
 
レポートでは,これらの4つの「型」別に,失敗例を含めていろいろ分析を行っていますが,ここではわれわれのキャンペーンを念頭に置いて,Equity型をみてみましょう.この型におけるキャンペーンは,以下のようなものだそうです:
 

 
すべてファンドレイジングに成功したとのことですが,まだまだ散発的で,萌芽期ということでしょうね.これらのキャンペーンの資金調達が,いま,どのような成果をおさめているか?という調査も行われていました:
 

 
これらの投資対象となった5つの会社は,18.6%が価値が目減りしたものの,まだきちんと存続していて,2社は次のファンディングのラウンドに進んでいるという点で,興味深いと言うことでした.

ただ,まだこの結果からいろいろ結論を出すには,事例が少なく,時期尚早のようですが,期待できそうな感じも受けます.

われわれのこのクラウドファンディングが,このエネルギーアクセス問題の ひとつの good practice として,積み上がっていけるようにがんばりますので,みなさんも応援をよろしくお願いします.
 
松尾 直樹
 

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2018年2月9日 16:00

電気を供給する機器としてのSHSコントローラー設計のポイント

今回は,SHS(ソーラーホームシステム)の技術的なスペックを設計するにあたって,留意しなければならない点をいくつかご紹介いたしましょう.ちょっとテクニカルな内容になりますが,できるだけ平易にご説明したいと思います.
 
1.WとWh
 
まずは,電気を表現する単位として,W(ワット)と,Wh(ワットアワー)を簡単に説明いたします.自分は理系でそんなこと先刻承知している,という方は,スキップしてください.
 
電気がどんなことができるか?という指標は,「仕事率」(単位は W) です.物理学的に言うと,一秒間にどれだけの仕事ができるか?という指標ですね.
 
電気を利用するということは,電気を消費して何かを行う機器(デバイスやアプライアンスなどと呼ぶことが多いです)を使用するということです.たとえば,われわれのEGAOに付属するLED灯は,約300ルーメンの明るさの室内灯で,約3Wの電力を消費します.19インチのTVは約10Wの消費電力です.一方で,比較のため かなり効率のよい冷蔵庫は20W程度です.
 
Wとは,その瞬間にどの程度の電力が使われるか?もしくは発生できるか?という場合に用いられます.一方で,それが継続する時間をかけたものが,Whの単位で表される電力量となります.電力量とはエネルギーに他なりません.
 
たとえば,3WのLED灯を,一日に4時間(4h)点灯させるなら,一日に 3W×4h=12Wh の消費電力となります (単位も かけ算の形で表されます).冷蔵庫の場合には一日に24h動かしますので,一日に 20W×24h=480Wh となるわけですね.これがけっこう大きいので,冷蔵庫は未電化地域では導入が難しくなります.
 
また,上では「消費」側の話をしましたが,おなじことは「発電」側にも言うことができます.10Wの太陽光パネルは,(ある条件下で) 10Wの電力を生み出します.そしてその状態が1時間続いたら,10Whの電力量(電気エネルギー)を発電することになります.
 
実際は,10Wの太陽光パネルは「ある標準化された日照条件 (ソーラーデイと呼びます) の下で」10Wの発電を行います (そしてWp (Watt-peak)という単位を用います).ソーラーデイ条件での10Wpの太陽光パネルの発電は,太陽の傾きが変化することを考慮して,一日に45Whの発電電力量となります.曇りの日や雨の日は,もっと発電電力量が小さくなります.逆に途上国(たとえばエチオピア)ですと,実際の晴天の場合,ソーラーデイより発電電力は大きくなります.
 
電池(バッテリー)に貯めることができるのは,電気エネルギーですので,Wh の単位で表されます.EGAOのコントローラーに内蔵されるリチウムイオン電池は,73Whあるいは146Whの定格容量となっています.実際に使用できる容量は,保護回路によって,それよりやや少なくなり,また長く使用すると徐々に少なくなっていきます.これはみなさんがスマホなどで経験されているとおりですね.ちなみに,わたしのMacBook Pro 15inchのリチウムイオン定格容量は76Whです.EGAOはそれと同等,もしくは2倍の容量というわけです.
 
3WのLED灯2灯と,10WのTVを同時に使う場合,3W×2+10W=16W の消費電力となりますので,たとえば64Wh実際に使える電池では,64Wh/16W=4h ですので,フル充電後,4時間使用することができることになります.
 
2.DCとAC
 
電気には,直流(DC; direct current)と,交流(AC; alternating current)があります.交流は,プラスマイナスが頻繁に入れ替わる(1秒間に50周期のものを50Hzといいます.Hzはヘルツですね)ものです.電力会社から送られてくる電気は交流ですので (交流の方が電圧を変えるのが簡単なのです),ほとんどすべての電気製品は交流で使うように設計されています.
 
でも,実は,パソコン,LED,TV,スマホなどの半導体を使っているものは,内部は直流で動作しています.太陽光パネルや電池の供給する電力も直流になります.よくきくUSBは,直流5Vの規格ですね (USB-Cは一部異なる電圧もカバーします).
 
したがって,SHSは,通常は直流仕様の機器の組み合わせとなっていて,市場に広く出回っている電気製品(より安いです)はそのままでは使えません.
 
3.EGAOのシステム構成とコンセプト
 
EGAOのコントローラーは,直流システムと交流システムの両方が使えるように設計しています.コントローラーへの入力もそうです.太陽光パネルの直流と,電力系統からの交流からの両方で充電することができます.出力の方も,直流12Vと5V (USB),交流用電気製品も使えます.
 
市場として,未電化状態の家庭だけでなく,電気が来ていてもかなり不安定な状態にある家庭(かなり多いです)も対象としていますし,その意味でも,交流対応以外に,UPS(無停電電源)機能も搭載しています.
 
EGAOの未電化家庭向けモデルは3種類あり,次のシステム構成です.懐中電灯型モバイルバッテリーは,携帯電話やスマホの充電ニーズが高いことも考慮したものです.
 
モデルX [フルスペック・モデル]
太陽光パネル40Wp, バッテリー146Wh, LED灯×3, 19” TV, 懐中電灯型モバイルバッテリー×2
 
モデルL [TV廉価版モデル]
太陽光パネル20Wp, バッテリー73Wh, LED灯×2, 19” TV, 懐中電灯型モバイルバッテリー×2
 
モデルS [照明オンリーモデル]
太陽光パネル10Wp, バッテリー73Wh, LED灯×2, 懐中電灯型モバイルバッテリー×1
 
下に,3つのモデルの場合のグラフを添付します.縦軸はWhですが,上のグラフはスケールが2倍になっている点にご注意ください.
左側の青色の棒が 電気の供給側(左がバッテリーがフルチャージした場合,右がソーラーデイ状態でのチャージ量)です.
右側の赤色の棒が 電気の需要側で,各種デバイスの一日の電力量消費量を表しています.
それぞれのモデルが「どの程度 使えるか?」を ご覧になってください.
 
 
松尾 直樹
 

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