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地方の企業にも直接金融を利用した経営の醍醐味を伝えたい

2021.10.12

東京証券取引所上場推進部の勝尾修さんは、従来の経済的なリターンの獲得に加え、投資を通じて社会的な課題解決を目指すインパクト投資に大きな関心と期待を持っています。
勝尾さんに、バブル崩壊以降の地域企業をめぐる金融の変遷や「インパクト投資と株式上場」をテーマにお話しを聞きました。

勝尾修

勝尾修さん

慶應義塾大学卒業後、キヤノン株式会社に入社。財務本部福島工場経理課という経理の現場で直接金融と間接金融とを使い分ける大企業の姿を垣間見る。その後、1988年東京証券取引所に転籍し、上場審査部などを経て、現在上場推進部に所属。地方にスタートアップ・エコシステム(※)を構築し、地方経済・企業を振興することをライフワークとしている。

(※)起業家、起業支援者、企業、大学、金融機関、公的機関等が結びつき、スタートアップを次々と生み出し、それがまた優れた人材・技術・資金を呼び込み、発展を続けることを生態系になぞらえた表現


地方に減ったように見える企業の目利き役

小笹:

勝尾さんは、日本のバブル崩壊前の1980年代後半に東京証券取引所に転職されました。転職後から今までの、地域企業をめぐる金融の変遷について、どう見ていらっしゃるのでしょうか。

勝尾さん:

私は、高度成長期の日本においては、ダイナミックな金融サービスを提供する株式公開を実現する証券市場を理解したいと思って、キヤノンから東京証券取引所に転職しました。1988年でした。以来、証券市場を通じて、様々な経験をしてきました。
戦後の高度成長期、日本の民間企業の資金調達は、間接金融、つまり、銀行等からの借入金への依存比率がかなりのウェイトを占めていました。 バブル期には、金融機関との株式の持ち合いなどという言葉もありました。 そのためとは言いませんが、地方には、私がキヤノン等で知った直接金融による経営の醍醐味を経験していない“きらり”と光る企業が散見される気がします。 もちろん地域企業が直接金融の醍醐味を感じられなかったのには、直接金融側にも問題があったのは否めません。

インタビュー
高度成長期には、新潟、京都、広島などの地方にも証券取引所はあり、地域の個性ある企業価値を目利きする能力を発揮して、地域経済をサポートしていました。
その結果、例えば、新潟には地元の米を使ったビジネスで目利きをいかした上場企業があり、京都では研究開発を長期的に支えられる忍耐力がある上場企業があり、 広島では地域の社会的なインフラを提供する中核企業が経営の安定性を求めて上場していました。
しかしながら、資本市場のグローバル化時代到来の必然性から、先端を行く東京に発行市場も流通市場も一極集中が進んでしまった感があります。
2000年以降、前述の新潟、広島、京都と3つの証券取引所が閉鎖され、現在は、東京・大阪以外には、札幌、名古屋、福岡の3ヶ所のみとなっています。

掲示板

小笹:

そのような認識から、改めて、地域の企業に資金融通の選択肢を増やす必要性があると考えるようになるわけですね。

勝尾さん:

失われた10年・・といわれている時代は、まだ、私も鈍感でした。
しかしながら、20年・・・、30年・・となっていく内に、何度かベンチャー起業家ブームもありましたが、失われたという言葉に鈍感になり、決別することができない状況に「何故だろう?」と、自問自答を繰り返すようになっていました。
加えて、課題先進国の日本では、起業に際して、上場を目指す必要性は強くないが、社会課題の解決は不可欠という強い意思のある起業家が増えてきました。
このようなスタートアップ企業には、間接金融を選ぶか直接金融を選ぶかですとか、経営の安定性を選ぶか成長性を選ぶかといった選択を強要する必要はないと考えるように私はなっています。

インタビュー

公益性を重視する企業と上場の両立は可能か

小笹:

それにしても課題先進国日本で、社会課題の解決を目指す公益性を重視する企業に、株式上場は馴染むのでしょうか。

勝尾さん:

私は両立が可能だと考えています。ESG投資やインパクト投資など、経営者が経済的リターン(利益追求)と社会的リターンのバランスを意識する環境が日本の直接金融の世界にも出来つつあります。
そこで私はこれから企業が生きていく道として、従来からある一般市場への上場以外に直接金融を多様に活用していく、以下のような方法が注目されつつあると思っています。

直接金融の活用方法

  • ・TOKYO PRO Marketへの上場
  • ・株主コミュニティ制度の活用
 

一つ目は、TOKYO PRO Market(投資家を知識豊富なプロ投資家に限定することによって、一般市場よりも柔軟な上場基準となっている株式市場)に上場する手法です。
ここでは資金調達の必要性が低い場合には、不特定多数の新たな株主を増やさなくても上場が可能で、東京証券取引所の一般市場に比べて上場しても株主の多様な意向を意識する必要性が低くなっています。
このため、個人的には、TOKYO PRO MarketはSDGsを特色とした市場になっていけば面白いと思うこともあります。
SDGsを意識した持続可能な社会形成のために、急成長は伴わないものの、公益性が高いビジネスを経営していきたいという企業の参加が、これから増えていくと思います。

インタビュー
例えば、産業廃棄物を扱う企業でPRO Marketに上場してくれている会社があります。この企業には、今後、利益を何倍にもしたいというような強い成長願望がありません。
企業の成長は、ともすれば、リサイクル社会の到来を遅らせてしまう裏返しの可能性もあるからでしょうか。
ただ、この会社がなくなってしまうと、不法投棄等の社会問題も深刻化する危険性があります。
こうした企業がTOKYO PRO Marketに上場した結果、社会からの理解度、知名度が上がり、社員の意識向上やリクルート効果なども出ていると聞くと嬉しく思います。
持続可能な社会を目指す使命感の高い会社であればあるほど、この考え方は応用できると思っています。
二つ目は、日本証券業協会が運営する株主コミュニティ制度です。これは、昔のグリーンシート制度ですが、非上場企業がここに所属しても、適時開示が緩やかです。
必ずしも株主数等の縛りを企業に課してはいませんから、株式投資型のクラウドファンディングを利用した会社の成長戦略にも使えますし、社会的インパクトを意識している企業も、巧く使うことができるのではと考えます。
特に、地域密着型の企業や、従業員のモチベーションを強く意識する会社には、株主との関係をコントロールできるのではないでしょうか。

インタビュー
成長の階段のステップも細かくなり、企業の成長性の選択肢が上場以外にも多様化しつつあると感じています。
まずは、ミュージックセキュリティーズの「セキュリテ」で資金調達とマーケティングをして、うまくいくようであれば、TOKYO PRO Marketや株主コミュニティ制度の活用を検討していく事も選択肢としては見えてくるかと思います。
私は、既に東証マンとしても30年超です。いろんな会社に上場してほしいと思って、全国を回ってきました。敷居の高さを指摘されることが多々ありましたが、ようやく、踊り場的な感覚、構造がはっきりし、道筋が見えてきた感がします。
日本企業がもっと直接金融サービスを利用して、もっと活き活きできるよう、ライフワークとして、日本証券業協会、第二種金融商品取引業協会、ミュージックセキュリティーズのようなプラットフォーム運営会社らと共に、企業の成長の化学反応の触媒作用として頑張りたいと思います。

インタビュー


小笹俊一
インタビュアー

ミュージックセキュリティーズ株式会社 広報部 小笹俊一

1968年東京生まれ。上智大学外国語学部卒。1992年NHK(日本放送協会)入局、アナウンサーとして大分、東京で勤務。2000年ブルームバーグニュース入社。2016年よりスパークス、セゾン投信とファンド会社を経験し2020年11月に当社入社。

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