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温かい消費を通じて共感資本社会を作りたい

2021.10.20

「いい会社」に投資する投資信託と謡う鎌倉投信を辞職した新井和宏さんが、3年前から始めたeumoプロジェクト。鎌倉投信時代は投資を通じたネットワークを育みましたが、今回は、より対象が広い消費の世界で温かみのあるネットワークを作っています。9月からは、新井さん自身が北海道ニセコ町に拠点を移し、電子通貨eumoを使って地域社会に幸せの好循環をもたらす仕組みを築きあげる考えです。創業から3年間の軌跡と展望を伺いました。

新井和宏

新井和宏さん

株式会社eumo(ユーモ)代表取締役。1968年生まれ。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。2007-8年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則した投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになります。2008年11月、鎌倉投信を創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍。2018年、共感資本社会の実現を目指してeumo設立。共感コミュニティ電子通貨eumoを使い、ユニークな仕組みで共感が循環する社会の実験を目指しています。


共感資本社会は、つながりをはぐくむ

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新井さんがCEOを務める株式会社eumoの設立から3年が経過しました。御社のウェブサイトを拝見すると、御社がコンセプトとして提示したいのは、共感という貨幣換算できない価値を資本として育み、共感をベースとして経済活動を含む様々な活動をしていくことを可能とする「共感資本社会」ということです。この3年間で、どのようなことを実現されてきたのか、教えてください。

インタビュー

新井さん:

新型コロナ感染拡大を想定していなかったので、まだまだ道半ば、始まったばかりです。僕らが考えている共感資本社会は、つながりをはぐくむです。AさんがBさんの店から買い物をすることによってつながりが生まれたり、BさんがCさんに寄付をすることによってつながりが生まれ、それでゆくゆくはAさんとCさんもつながっていくような社会を創ることを目指していて、その媒介となるのが、共感コミュニティ通貨のeumoです。eumoの仕組みを使ったコミュニティ通貨は3か月で有効期限が切れるので、期限が切れたお金の処分案は、コミュニティマネージャーが決められます。全額、寄付することもできます。
前職の鎌倉投信時代は、投資という枠組みの中でつながりを作って行こうと考えました。(社名もコミュニティ通貨の名前も共にeumoで、ちょっと紛らわしいかもしれませんが、)今度のコミュニティ通貨eumoでは、消費で社会を変えていく人たちのプラットフォームを提供しようとしています。

仕組み図
(出所:eumoウェブサイトより)

eumoは電子マネーと同じでアプリにチャージして使うことができますので、その違いを上記のような表にしてみました。右側に書いた一般的な電子マネーは、使用場所は ほぼ無限大で、決済もすぐにすることが可能です。一方で、eumoは、加盟店でしか使うことができませんので、使用場所は限定的ですが、つながりを持ちたい方ばかりが集っていますので、日々、eumo使用者間のつながり関係は強化されていきます。
今、その共感資本社会を実現する上で、共感が資本になる仕組みの入口に立った段階です。今できている状態は、共感を持って消費行動をしていただくことです。共感をベースにしているので、ギフト機能が付いていて、共感コミュニティ通貨eumoを利用する際に、いわゆるチップをお支払いいただく仕組みが設計されています。

インタビュー
アプリ上で全部開示しているので見ていただくとわかるのですが、過去のギフト量で見ると、今までのユーザーは、定価で支払いをする際に平均して、プラス8%をお店にギフトしています。このチップという概念は、海外では普通にあるのですが、日本は、定価文化で定価から如何に安く買うかということに関心がいくので、損得ばかり考える人が増えてきています。
そうではなくて、感謝や応援の気持ちをギフトによって表現することで幸せや豊かさを、感じていただく。ギフトをしたくなるようなお店を加盟店にしていくことによって、いい社会の循環を生んでいこう、という活動をしています。

アプリにSNS機能搭載で共感を可視化

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その流れで7月にeumoアプリのアップデートがあったのですね。

新井さん:

アプリに、決済機能に加えてSNS的な要素を加えてみました。参加者につながってもらうことを大事にしたいので更新しました。
新アプリは、誰がどんなお店で利用しているかを知りたいという関心に対して応えていきます。個人をフォローできる機能が入っていてフォローすると、インスタグラムと同じように、自分がフォローしている人が買い物した記事が次々に出てくるようになります。「新井さんがイケウチオーガニックの表参道店で買い物をしました。」というような情報が出てくるわけです。
これは個人情報です。人は、仲間には見て欲しいですけど、仲間じゃない人には見て欲しくないのです。そこでSNSのような仕組みを使うのがいいのではないかと考えました。見られたくない人は、アプリを使わなければいいだけです。みんなとつながりたい人は、積極的に共有しています。eumoの加盟店の中で、買い物したことが恥ずかしいと思われる店はないので、この新機能は、うまくいくと思っています。共感を生んでいける関係性を可視化したいんです。つながりを価値に変えていこうということを今やっているわけですね。

ギバーを定量評価できる信用経済を作りたい

新井さん:

こうして仕組みを作っているのですが、まだ、不完全だと思っています。なぜなら、応援しようと思う人がお金を出し続けていると、どこかで枯渇するわけですよ。共感疲れと呼ばれるものです。これが持続可能になっていくためには、 お金が一方向じゃなくて循環しないといけないんです。循環させるための信用経済を作ろうとしています。

インタビュー

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セキュリテの利用者にも、例えばマイクロファイナンスファンドに出資することで 地域の暮らしが少しずつよくなり、結果的には、自分のところにも分配金や特典が戻ってきて、その分配金をまた新しいファンドに出資するという循環を楽しんでいらっしゃる方が沢山いらっしゃいます。

新井さん:

現在、eumoにいる利用者にも、基本的に世の中でギバーと呼ばれる経済的に余裕がある方々がたくさんいらっしゃいます。この方々は、ギブする人たちです。僕らはギフト経済(見返りを求めずとにかく与えることを優先する経済)に変えたいので、その人たちが安心してギフトできる状態を作っていくことが大事です。
で、その時に、過去から現在まで、ギバーの方々がeumoでギフトしてきた量を、データとしてもっているので、これを信用に変えたいと思っています。
これまでの信用スコアというのは、基本的にその人の返済能力や 支払能力にフォーカスをしているだけです。今までの資本主義は、それがベースでした。それに対して、これからの社会に僕らは社会の為、地域の為にやってくれている人たちの行動も評価する信用スコアが作りたいのです。
そのためにも、クラウドファンディングでもなんでも、利他、人のために何かする行為をきちっと数値化し可視化してあげることが大事で、そういうギフト経済にもっていきたいんですよね。

インタビュー
そうすると、そこにギブする人が入ってくれば貨幣が循環しますよね。「私はあなたにギブします。あなたは別の人にギブします」というペイフォワード(ある人物から受けた親切を、また別の人物への新しい親切でつないでいくことで親切の輪を広げること)的な考え方なんですが、その枠を可視化させてあげたいのです。この施策をすると、ギブしてくれている人たちに変化が起こると思っています。ギブできる人は、大体、法定通貨のお金持っている人ですから、このギブの信用枠は、あってもなくてもいい方々がいらっしゃるはずなんです。
法定通貨をたくさんもっているから枠はいらないっていう人には、自らの枠を、そのまま、若者にギフトしてもらうんですよ。「この人は信用できるから、私の枠をあげます」という風にですね。
この仲間たちがいれば、若者が「ちょっとお金が必要です」といえば、バーッとお金が集まる。この仕組みを信じられるか信じられないかというだけなので、法的には保証していないんです。
僕らは、みんなから集めて足りなかったからeumoとして穴埋めをします。そうしたら、新しい信用経済が循環し始めると思っています。
このように、社会的仕組みとしては、信用枠のペイフォワードができるようになるまでいきたいなあと思っています。 そうすると循環し始めるんですよ。そこまで行くのにまだ道半ばです。

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仕組みを作るのに、どの位、時間がかかりそうでしょうか。

新井さん:

今年、まずは、信用枠をはかる団体を立ち上げて基金を募って少額で始めたいと思っています。今年か来年には、僕がずっとeumoでギフトしてきたとしますよね。トータル何十万eumoか何百万eumoかギフトしたとしますよね。その枠を若い人に渡してしまいます。そして、若い人が、「私、起業したいので100万eumoほしいです」と、言ったら基金から出るとか、そういう仕組みを作ってしまおうと思っています。

インタビュー

合理的でないお金を循環させたい

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鎌倉投信の時の活動と比べると、よりユニバーサルということになるのでしょうか。

新井さん:

そうなんです。結局、投資にフォーカスすると、どうしても投資先が限定され、ファンも限定されると感じていたのですが、消費での応援活動って、幅が広くて、いろんなことができるんです。
消費ということを考えるために、例えば、オンライン決済サービスについて考えてみましょう。PayPayのように、経済合理性があるもので、なるべく手数料が安いという仕組みの決済サービスを考えてしまうと、ソーシャルな活動をしている人たちは行き詰ってしまうんですよ。
要は、通常の価格よりは、どうしても高くなってしまうんですよ。 オーガニックなものを使ったもの、例えば、オーガニックコットンタオルは、どうしても、仕組み上、高くなります。
しかし、それが安ければ安いほどいいっていうような、圧力が消費者からかかってしまうと、結果として、ソーシャル系のものを選択しないというようなことが起こってきてしまい、価格差がどんどん広がっていってしまうんですね。

そういう社会を望まないのであれば、やっぱりそういう活動をしている人たちを応援する行為をする人を増やすしかないんですよね。それができるのかどうかが、僕にとって、最大のチャレンジです。要は、ギバーの人たちが、ギブし続けられる環境を作って そのお金がしっかり循環していくということを実現できるのかどうかということが 最大のチャレンジですね。今は自分にとって損得しか考えない状態の中で、合理的という判断を皆さんしています。でも、それで社会が悪くなったら、結局、自分に返ってくるんですよね。環境問題が典型です。日々の活動が、自分たちが生きづらい環境を作っているのであれば、生きやすい環境を作っていくことが本来大事なんです。今まで企業努力によって、企業が頑張れば価格は下がるんだっていう考え方でずっと来たわけですが、それが結局、もう限界に来ていて、どこにしわ寄せが来ているかというと、全て弱者にいくわけですよ。
最も弱いところに負荷がかかるって、全てのモノにいえていて、何かに負荷をかけると弱いところが折れるんですよ。そこが何かといえば、例えば、途上国での児童労働ですよね。衣服でいえば。

インタビュー
結局、それが、はびこってしまうのは、どんなことを言ったとしても価格しか見てないからですよ。で、あれば、そうじゃなくて、きちっと払う。きちっとフェアトレードするということですよ。
要は価値に見合った価格できちっと払うということを、行き過ぎた経済合理性では担保できないですよ。だから、それは行き過ぎないようにする。資本主義は自由だからいいのですが、行き過ぎちゃうんですよね。なので、行き過ぎないような健全なバランスをみんなが考えて実行していかないといけないんです。
eumoは、ギフト経済を志向する経済活動を実行するためのプラットフォームなので、こういうことをしてくれて、「ありがとう」といって、余分に多く払う。でもこの多く払う、ギブすることって、その人が幸せになるんですよね。幸せなお金の使い方なわけですよ。こういうところを応援したいんだ、応援したいから、お金を余分に払うんだと。で、そういう人が増えていけば、社会はよりよくなっていきます。「安ければ安い方がいい」と、損得を考えるのは悪くないですが、行き過ぎてしまいます。
行き過ぎてしまう以上は、ものごとを成り立たせるための仕組みが必要で、それがeumoであればいい。ようは、全体がeumoである必要はないが、支えたいもの、大切にしたいものが、大切にできる環境づくりを、お手伝いするのがeumoなんで、それはもう共感でしか、動かせないですよ。
それで、われわれは、共感資本社会っていってるんですよね。 共感が資本になってサポートしていく。それを実現してみたいのです。

インタビュー

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ミュージックセキュリティーズについてのメッセージをお願いいたします。

新井さん:

昔から、トビムシの関係も含めてですが、よく存じ上げています。
トビムシはセキュリテで応援者を募り、鎌倉投信も投資でトビムシを支えました。このようなことがなければ、今のトビムシはないと思うほど大きな役割を果たせたと思います。
今、ミュージックセキュリティーズが考えていた時代になったんだなと、思っています。本当に先駆けでしたからね、本当にそういう時代になったんだなあという風に感じています。
我々は、ミュージックセキュリティーズがやられていることと、ちょっと次元を変えて、みんなが活動しやすい経済を作ることを目指したいなあと思っています。

写真3_2
西粟倉村共有の森ファンド2009

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ミュージックセキュリティーズも、一緒にできることがあったら、お声掛けください。

新井さん:
eumoのコミュニティの中で、お金調達したいです、応援したいという方がいるでしょうから是非、おつなぎさせてください。

 

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