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私たちにできることを やっぺー

2021.03.18

今回は特別編をお送りします。宮城県気仙沼を代表する水産加工業の斉吉商店は、東日本大震災で、工場、自宅兼本社、支店が全壊となりました。被災から10年。被災直後に組成されたファンドの償還も終え、コロナ禍の今、斉吉商店はどこに向かおうとしているのか。4代目斉吉商店を営む斉藤和枝専務に伺いました。

斉藤和枝

斉藤和枝さん

1961年宮城県気仙沼市生まれ。斉吉商店専務取締役。社長である夫と4代目斉吉商店を営む。水産加工会社の経営で東奔西走するだけでなく、「気仙沼つばき会」や「歓迎プロデュース」といった組織を通じて、地域振興にも取り組む。著作に「おかみのさんま」。


震災10年、斉吉便りで「ありがとう」

小笹:

斉吉商店ですが、震災直後、奇跡的に、家伝の「さんまのたれ」が見つかったことで、大きく知られました。被災直後の4月下旬には、セキュリテの被災地応援ファンド第一弾で、「斉吉商店ファンド」を組成。約400人から1000万円を集めて、復旧復興に向けて舵を切りました。その後、ファンドは、2018年7月に償還。斉吉商店は、震災後に立てた事業計画を見事に達成し、171.2%という高い償還率を残しました。「震災から10年」のお気持ちを、月次の斉吉便りで「ありがとう」という題名で、書いていらっしゃいますね。

写真4_1

和枝さん:

読んでいただいてありがとうございます。
本当に、震災の前までの年月と震災後の10年を比べた場合に、この10年は、本当に、 考えられない位、たくさんの方にお世話になったなあと思います。 それがまず思い出されます。
写真4_2
斉吉気仙沼便り 2021年3月号

セキュリテの伴走でできた事業計画書

小笹:

振り返っていただくと、投資家やセキュリテのファンドはどんな役割を果たしたのでしょうか。

和枝さん:

リスタートするための事業計画をセキュリテさんと一緒に作ったと思っています。
斉吉は、震災の年の4月25日に、ファンド募集を開始しています。
その募集のため、3月末や4月はじめからリスタートの事業計画をたてさせてもらいました。その際、セキュリテさんに、伴走してもらったのです。引き出してもらったんですね。
「前はこういう実績でしたが、これから、どうなりたいですか」
「どう数字を積み上げていって事業を再開するんですか」ということを聞き出してもらったんですよ。
結局、それをベースに、斉吉は、リスタートの計画を立てることになるので、セキュリテさんと早いタイミングでリスタートするための事業計画をたてることにフォーカスできたのが大変ありがたかったのです。

便りでお伝えしたように、被災地では、飲み水もない、電気もつかない、雨風をやっとしのげるところで、寝起きしていて、混乱していました。自分たちの暮らし、社員や周囲の人たちが生きていくためのことを考えるので、精一杯でした。もちろん行方不明者の捜索も続いていました。そういう混沌とした状況の中で、自分たちだけで計画を作るのは難しかったのです。そこで、ちょっと冷静な視点で、セキュリテさんが伴走してくださるのがとてもありがたかったですね。

写真4_3
斉吉商店ファンド

今も思い出す投資家からの言葉

和枝さん:

次に、投資家の方々です。斉吉ファンドには4月25日からの募集開始後、数週間で募集総額が集まったんです。この時期、現地だけでなく、世の中全体がどうしたらいいんだろうかという混沌とした中で、斉吉ファンドに「投資というより、手伝いをしよう」という投資家の方々が、かなりいらっしゃったということになります。

今思うと、大変にアンテナの感度の高い方々が集まったのだと思います。10年前に、ネットでしっかりファンドを買うことができた方々。知識レベルも高くて世の中に対する情報網をしっかり張っている方々に買っていただけたと思いました。
というのも、被災地応援ファンドでつながっていただいた投資家の方々からいただいたお言葉には、被災直後だけでなく、今も、重要な視点がいくつもあるのです。

写真4_4 2011年5月セキュリテ被災地応援ファンド説明会

いつも思い出す言葉です。「和枝さん。震災が起きたことで斉吉さんが直面している問題と、気仙沼という地域で斉吉さんが、もともと抱えていた問題とは、分けて考えなくてはならないよ」というのは、忘れられないですね。

震災で建物や働くための工場が流されたという問題と、地域で構造的に人口減少、高齢化が進む問題とは、別の問題なので、分けて考えなくてはいけないことを、しっかり肝に銘じられたのはありがたかったです。

さらには、「原材料があるから作るのではなく、お客様に必要とされている、喜んで頂けるから作ると考えなければいけない」という言葉も、投資家の方々からいただいた印象的な言葉です。

誰と話をするかで日々の考えが変わっていきます。
企業経営者の方など、ビジネスを冷静にみられている方々と、コミュニケーションしながらリスタートできたのは、大変ありがたいことだったなあと思います。

写真4_9 セキュリテ被災地応援ファンドツアー「425祭 2018」

小笹:

さきほどセキュリテの投資家のことを、「投資というより手伝い」とおっしゃいましたが、何か意味がありますか?

和枝さん:

お手伝いいただけたということに他ならないと思います。もともと、被災地応援ファンドの仕組みが5000円が寄付で5000円が投資でしたので、最初から、もう半分寄付してくださっているんですよね。

親でもなければ親戚でもない私たちに半分を寄付して下さるということですよね。
本当にありがたいと思いましたし、何とかして気持ちに応えないといけないとも強く思いました。

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また、投資家の方々に、その後、何度もお会いする機会がありましたけれども、通常の投資と違って、当時リスクだらけの私たちの現状に「たくさんリターンが出るようにしてくれよ」という方は、一人もいらっしゃいませんでした。
ただ純粋に、「頑張って、被災地に仕事を作ってくださいね」とおっしゃるだけですので、 手伝っていただいている意識でおりました。

小笹:

償還率は171.2%と100%を大きく上回りました。

和枝さん:

ありがとうございます。理由は2つあります。ひとつは、最初に、リスタートのスケジュールをたてさせてもらったときに、計画を小さく保守的に見積もったからです。何十年もかかって積み重ねたものが流されたのですから、そんなに急に良くならないと思いました。
もうひとつは、半分寄付でいただいた残りの5000円ですので、何としても、お返ししたいと思いました。100%を上回れて本当に安心しました。

インタビュー動画「斉吉商店ファンド」

斉吉商店は今

小笹:

それでは続いて、斉吉商店が、今、どうなっているのかについて、気になっているファンの方も多いと思います。お話をいただけますか?

和枝さん:

震災の時と今と大きく違うのは、ファンドを始めた時は、社長である夫と私が経営の中心にいましたが、今は、息子や娘が帰ってきてくれました。そこで、事業を子供たちに任せはじめています。
長男は常務になりまして、近い将来、社長になってもらう考えでおります。
次男は今、本店の店長をしております。それから長女がおり、娘夫婦も4月から会社に入ってもらうことになりました。みんなで、自分たちの夢をここでかなえようと集まってきているのが、当時と大きく異なります。

若い社員さんも、とても増えました。割合としては20代と30代の人たちが一番多いです。被災後2年目から新卒採用を続けてきました。

それから商いの形が、新型コロナウイルスの感染拡大で大きく変わりました。
私たちの商いは行商が基本です。百貨店などに出向いて、お客様にお会いして 気仙沼で作ったものを販売させていただきました。もちろんインターネット通販もありましたが、商いのボリュームは、行商の方が大きかったのです。

それが新型コロナで、行商が難しくなりました。そこで、去年の4月から、通販サイトでの販売に軸足を移し、思い切りそちらに向けてアクセルを踏んでいます。

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斉吉商店オンラインショップ

今では、東京の常設店も閉めて売上のほとんどをインターネット通販から得る形に変わりました。 もちろん、対面でお客様にお会いすることを何よりも大事だと思っているので、 百貨店の催事への参加は続けています。 対面で直接お会いして、お客様にお手渡しする場があるからこそ、 お客様にお役にたてる商品ができると考えています。 なので、通販だけにしてしまうと、少しずつ感覚がずれることになるのが 恐ろしい。対面は、なくしてはいけないと思っています。 前よりも頻度は減りましたが、かならず月に一度は、 お客様の近くまでいって、お客様に会い、お話をじかにお聞きすることにしています。

小笹:

それにしても、大胆な経営判断を短期間でされましたね。

和枝さん:

大変怖かったですが、ずっと行商をしていたので、2月から大変なことになるという危機感がありました。そこで残された道は通販しかなかったのです。
気仙沼の人口は約6万、人口よりも魚の方が多いですから(笑)、通販しかないと考えたのです。

ここで震災の時の経験が役立ちました。
こういう時は、1回、大胆に思い切って舵を切ってみるほうがいいと。
そこで、断腸の思いで出店も催事も一時、全部、断って、それで、 通販だけをすることにしました。
去年3月は、ものすごく売上高が下がりましたが、4月から持ち直して、現在に至っています。

未来を創造するものにお金を使いたい

小笹:

それは何よりです。斉吉商店の将来を楽しみにさせていただきます。最後に、このインタビューコーナーでは、皆さんのお金の使い方や価値観を伺っています。斉藤さんのお金に関する考え方を教えてください。

和枝さん:

お金は、自分のためには、あまり使ったことがなく、モノもいらないタイプです。斉吉にご縁があり働く人たちが、よりいきいきするようなものであれば、お金を使いたいですね。 若い人たちがいきいき働くこと以上に、未来を創造できることはないと思うからです。
そういうところには、お金を使ってもいいなあと思います。

「気仙沼つばき会」という地元女性の会の有志で、「一般社団法人 歓迎プロデュース」という会を作り、漁師さんたちの為に、震災後のかさ上げ、区画整理でなくなってしまった港のそばの銭湯を復活させる活動をしたことがあります。

漁師さんがかっこいいなあと思う若い人も集まってくれて。真剣に仕事に取り組むところを見ると、すぐに未来が創造されると考えてしまいます。ハハハ。

小笹:

和枝専務の笑顔が印象的なインタビューでした。いつも笑顔でいらっしゃるのですか。

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和枝さん:

震災の後、自分はじめ、皆の元気がものすごく、なくなったんですよ。
その理由について、ある時期から、「自分が眉間にしわを寄せてがっかりしたからではないか」と思うようになりました。

震災で、みんなが、ものすごく悲しいことになりましたよね。
私も、会社も家も全部なくなりましたけど、もっと大変な人たちがいっぱいいるんですよね。
それで、私は、笑っているのが仕事だと思うようになりました。ハハハ。
地元で、「やっぺやっぺ」という言葉があります。「やりましょう。こういう風にしましょう」という意味ですが、「やっぺ」というのが、私の役割だなあと、思いました。

最初は無理にでも笑っていました。

「ありのままでいいんだ。ありのまましかない」と、思えるようになったのは、 斉吉便りにも書きましたが、震災以降のことなんですよ。

「今日も明日も私たちにできることを精一杯磨きながらやっぺー
元気で楽しくね」

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小笹俊一
インタビュアー

ミュージックセキュリティーズ株式会社 広報部 小笹俊一

1968年東京生まれ。上智大学外国語学部卒。1992年NHK(日本放送協会)入局、アナウンサーとして大分、東京で勤務。2000年ブルームバーグニュース入社。2016年よりスパークス、セゾン投信とファンド会社を経験し2020年11月に当社入社。

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