えこふぁーむニュース

社長コラム2009年11月19日 16:28

「環境関連事業に携わって思うこと―循環・再生・共生―」

環境カウンセラー  中村 義幸
 

現在私は、鹿児島県内で環境関連事業に携わっております。業務内容は一般廃棄物処理業・産業廃棄物処理業・建築物環境衛生一般管理業・リサイクル処理業と多岐にわたり、今後は農業法人を設立して、食品リサイクル法に対応した養豚システムの確立とそこから発生する完熟堆肥を利用した有機農業に取り組む計画です。

「環境」という文字を『環』と『境』とに分解して、私なりの解釈をさせて頂くと、『環』は輪という意味で循環にも通じます。『境』は文字通り境(さかい)で、自然界と人間の経済活動(または物質文明)との境界を現しているように思います。つまり、全ての人は、生きていく上で「環境」との関わりをもっていることになります。さらには、業として「環境」に携わることは環(わ)の境界上にいて、自然界と人間界との橋渡しをする重要なポジションだと思います。

人の健康と福祉は、エネルギー・水・食料・その他の資源が効率的・安定的に供給され、廃棄物が安全に処理されるかどうかにかかっています。よく、「地球規模で考え、足元(地域)から行動へ移す」という言葉を耳にしますが、経済の拡大に狂奔してきた20世紀後半には、経済活動の暴発的増大による地球温暖化や化学物質汚染に代表される様々な環境問題の発生、最終処分場の不足等、様々な問題を生じてきました。

日本は金額ベースでは経済大国・輸出大国といえますが、重量ベースでは明らかに輸入超過です。食糧自給率も政府目標が45パーセントとお粗末な限りです。御存知のとおり主な地下資源も輸入に頼っております。大雑把にみて日本への年間総輸入量が七億トンで、年間総輸出量が一億トンです。狭い国内に残る六億トンのうち、四億五千万トンが廃棄物です。廃棄物の最終処分容量の残余年数が少なくなるのは自明の理です。

今や大量生産・大量消費・大量廃棄といった時代は終わり、廃棄物ゼロを目指す(ゼロエミッション)資源循環型社会に突入しました。当然、ライフスタイルも変化するでしょう。これまで廃棄物処理業といわれてきた分野は今後、再生資源化処理業に転換する必要があります。発想の転換で、廃棄されたレアメタルを多く含んだ電子機器は都市鉱山と位置付けることも出来そうです。

私達は後に、先の産業革命と並び称せられるような、エコロジカル革命の真っ只中に居るといっても過言ではありません。このダイナミックに変化する時代に「環境カウンセラー」が果たす役割は大きいといえます。広義でのエコロジカル・デザイナーあるいはエコロジカル・アドバイザーと呼べるのかもしれません。

 

製造分野や輸送分野でのエネルギー効率の重要性やLCA(ライフサイクルアセスメント)を考慮した設計、持続可能な環境保全型農業、地球に優しいエコロジカルな汚水処理や自然界の知恵を取り入れた地域デザインにいたるまで、「循環・再生・共生」を合言葉に活躍の場は拡く多くなることでしょう。

旧来の生活様式を改める意識改革の推進のためには、環境教育の充実も求められます。今後は、「参加型自然体験環境教育」プログラムも増える見込みで、インタープリテーション(自然解説)の出来る指導者養成と社会的地位の確立が急がれます。

資源循環型社会の構築にむけて、都会では出来ない田舎ならではのシステム作りの手法があるはずです。全国一律に実施すべきものと、都市部と農村部の棲み分けによって実効のあるものとに分かれると思います。

例えば、地方ならではの環境関連業務としては、グリーンツーリズムやエコツーリズム・ネイチャーゲーム等の企画・立案・運営の仕事があります。離島は特に恵まれています。環境教育の一環とした位置付けも可能です。カヌーやヨット、スキンダイビングといった水辺(すいへん)活動ともドッキングできます。米国やカナダでは層が厚く普及していますが、森林や海辺のガイドの仕事も、これからの日本では求められると思います。国立・国定公園が多い鹿児島県は、お客様の受け入れだけではなく、こういったインタープリターやレンジャーの養成場といった面でも可能性を秘めており、専門的な訓練や学習をすることにより、地域を知り尽くしている我々が先頭に立つことも可能です。

自然環境との係わりは人間が本来持ち合わせている五感を復活し満足させるとともに癒しに繋がり、心の荒廃に起因する事件が増えている日本で、心理的療法といった側面からも今後は益々需要が高まると予想されます。ソフト(手法・教材)の開発・ハード(施設)の整備が望まれます。

自己完結型とか地域循環型といった言葉をキーワードとするならば、究極の可能性を離島は秘めているといえます。現に、屋久島はゼロエミッション(廃棄物ゼロ)の島を標榜して熱心に取り組んでいます。成功すれば、世界中の離島が抱える環境問題を解決できる福音となるでしょう。地方の離島から世界を股にかけて現地の技術指導に飛び回る仲間が生まれても不思議ではありません。離島のハンディを利点と捉えることにより、新たな視点で郷土を眺めることが出来ないでしょうか。

「環境カウンセリング」を行う際に忘れてならないのは、環境関連法との整合性です。時代的背景や社会構造の変化に伴い、近年、様々な制度をとりまく状況も大きく変化してきました。「循環関連六法」・「農業環境三法」・「都市緑地保全法」・「河川法」等の成立や改正が矢継ぎ早に行われております。

新しい法律が施行されるということは、それに付随した新しい業務が派生します。法律の内容を吟味することで、私達が地域のために出来ることをなにか見つけられるかもしれません。お手伝いできそうな業務があれば、地域の行政や住民にアピールすることです。つまり、提案型企業となって新しい仕事を創出する訳です。

農業関連法等は普段馴染みが薄いかもしれませんが、化学肥料の過剰投与や家畜糞尿の農地還元により、身近な地下水が硝酸性窒素による汚染を受けているケースが見受けられます。直接的な修復法や間接的な手法により、新しいビジネスチャンスの到来と受け止めることも出来ます。

鹿児島県川辺町では廃棄物の焼却灰中のダイオキシン分解試験に成功するとともに、逆に焼成してエコレンガという有価物を生み出しています。地方のハンディどころか、地方からも全国へさらには世界へと情報を発信できる好例といえます。

都市緑地保全法では都市計画法や環境基本法との調和を保つように謳われております。都市部のヒートアイランド現象緩和効果を狙った屋上緑化に関係があります。屋上緑化用植物の生産と都市部への供給といった新産業が創出できそうな気がします。

河川法では河川行政に「多様な生物の棲む環境としての河川」という新たな視点が加わり、「多自然型工法」が盛り込まれました。これまでの防災機能を維持しながら自然環境を修復する河川工事の手法です。

持続可能な資源循環型社会づくりにむけて、世の中は規制緩和の流れにあっても、環境関連法案は明らかに強化されていく方向にあります(昨今、規制緩和という言葉が一人歩きしておりますが、本来は「規制と緩和」で助詞の「と」が抜け落ちているような気がします)。また、これまでの環境関連法は企業レベルでの話のような印象が強く、一般住民には縁のないようなものに感じられていましたが、徐々に一般住民にも関連の深いものが増えてきています。

どのようなスタンスで環境問題に取り組んでいくべきかは一人一人が自己責任で決めることですが、その時々の時代的背景や社会構造の変化の中で、世の中の流れを見極めながらの取り組みもますます重要になってくるのではないでしょうか。そのお手伝いの一端が「環境カウンセラー」の使命だと存じます。その活動への社会的要請は確実に高まっております。

 
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